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2014年11月13日(木)

北東アジアの平和協力の枠組みをどうつくるか

韓国・高麗大学の講演会 志位委員長の一問一答

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 日本共産党の志位和夫委員長は10月27日、韓国・高麗大学(ソウル)で行った講演「北東アジア平和協力構想を語る」で、参加者の質問に答えました。その大要を紹介します。


北東アジアのTACは難しいのでは?

歴史問題の解決が土台、“できるところ”からスタートして実現をめざす

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(写真)高麗大学で講演する志位和夫委員長

 ――(司会)まずTAC(東南アジア友好協力条約)について質問があればどうぞ。

 ――(研究者・男性)まず志位委員長のいくつかのアイデアにお礼を申し上げます。TACについては私も研究しており、北東アジアに適用できるかどうかは一つの課題でもあります。ご存じのとおり2008年から日中韓3カ国の首脳会議を開いていますが、領土問題、歴史問題のためにこの2年間は開かれないでいます。こういう現実のなかで、日本共産党が政権党であればともかく、現実には実際にTACを北東アジアに適用できるかは難しいのではないでしょうか。志位委員長が各国の大使や市民に訴えているというのは良いことですが、もう少し、具体的な北東アジアでの方向性をお話しいただければと思います。

 志位 たしかに北東アジア規模でのTACの締結ということは、簡単なことではないと思います。いま言われたように、その最大の障害の一つになっているのは、日本政府の歴史問題にたいする逆行的な態度です。過去の侵略戦争や植民地支配を肯定・美化する逆流を許さないことが、この地域に平和と安定の枠組みをつくりあげるうえでの不可欠の土台になります。これは日本国民の責任としてやらなければなりません。これは大仕事ですが、歴史問題で、歴史の事実をゆがめる逆行的な行動はとらない、「村山談話」、「河野談話」を継承し、それにふさわしい行動をとる――こういう方向で日本政府の姿勢がきちんとすれば、TACの締結にむけて大きく道が開かれるのではないでしょうか。

 すでに日中韓3カ国はTACに加入しています。そしてさきほどのスピーチでもお話ししたように、東アジア首脳会議(EAS)の「バリ原則」(「互恵関係の原則に関する宣言」)についても賛成しているわけです。ですから歴史問題を解決し、政治的意志さえあれば、必ず道が開けると、私は考えています。

 具体的な進め方についてのご質問ですが、私は、“できるところから、可能な国でスタートする”ということが良いのではないかと考えています。

 たとえば、いきなりTACの締結に至らなくとも、まずは政治宣言の形でその意思を表明することは、重要な一歩になると思います。TACの場合も、条約が結ばれたのは1976年ですが、まずは1971年に政治宣言――東南アジア平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)宣言を採択し、その具体化の作業を通じて、TACの締結へと発展したという経過があります。

 ですからたとえばですが、日中韓の首脳会議という枠組みがあります。この日中韓の3カ国でTAC締結にむけた政治的合意を取り結び、政治宣言を行う。そしてそれを条約に発展させていく。その条約は北朝鮮を含めて外に開かれるようにする。そういう段階的な、一歩一歩のアプローチで実現をはかるということも重要だと思います。

 ぜひお互いに知恵を出し合って、実現をめざしたいと思います。

歴史問題を解決するための組織があるのか?

党全体の仕事として、歴史を偽造する逆流の根を断つまで力をつくす

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(写真)志位委員長の講演に聞き入る参加者=10月27日、高麗大学(ソウル)

 ――(司会)TAC実現のためには、やはり歴史問題が重要だということだと思います。今日、ここにも歴史学者もいますし、歴史を勉強している学生もたくさんいます。それに関連しての質問があればどうぞ。

 ――(学生・女性)専攻は韓国史植民地時代をやっています。委員長が植民地支配について真剣に反省しなければならないと言われたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。北東アジアの平和協力のためにはまず歴史問題を解決しなければならないと強調されました。その面で、日本共産党の中に、歴史問題を解決するための組織があるのでしょうか。あるとすればどのような活動をなさっているのか。

 志位 特別の組織というものはありません。党全体の仕事としてやっています。たとえばこの間、日本では、日本軍「慰安婦」問題について、「河野談話」を葬ろうという攻撃が、一部右派勢力によって行われています。私は、3月に「河野談話」否定論を全面的に批判する見解を発表いたしました。さらに、「しんぶん赤旗」は、9月に、「吉田証言」が虚偽だったことを利用しての「河野談話」否定論を全面的に批判する論文を発表いたしました。こういう活動は、党の一部門でやる仕事ではないのです。私たちは党の総力をあげて、歴史を偽造する逆流の根を断つまで力をつくしたいと決意しています。

アメリカは歴史問題をどう見ているのか?

安倍政権の歴史逆行の行動は、アジアだけでなく全世界を敵にまわすことになる

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(写真)高麗大学正門

 ――(研究者・女性)アジア問題研究所の研究者です。まずは日本共産党の委員長にお会いできて光栄です(志位「私も光栄です」〈笑い〉)。私が質問したいことは、アメリカが歴史問題をどう見ているかということです。米国は日本の再武装(集団的自衛権行使)と歴史問題を分離して対応しようとしていると思います。歴史問題、「慰安婦」問題については日本に対して反省を求めていますけれども、再武装につきましては一部分支持していると思います。実は韓国社会にも一部にそのような視点があると思います。志位委員長はもちろん再武装については反対していると承知していますが、分離して対応しようとする対応にはどのようにお考えでしょうか。

 志位 米国政府が日本の歴史問題にどういう対応をとっているかは、きわめて明瞭です。昨年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝に対して、米国政府は、「失望した」と異例のコメントを出しました。

 歴史逆行の勢力の主張というのは、結局のところ、過去の日本軍国主義の賛美にほかなりません。ところが第2次世界大戦後の国際秩序というのは、日独伊の侵略戦争を不正不義のものとして断罪したうえに成り立っているのです。ですから歴史逆行の勢力の主張は、今日の国際秩序そのものの否定になるのです。ですから米国政府も、首相の靖国参拝、日本軍「慰安婦」問題をめぐる歴史のわい曲、これらについて容認できないという立場は明瞭だと思います。

 同時に、安倍政権の集団的自衛権行使容認については、米国政府は、これに支持を与えています。おっしゃるように、とりあえずは分けて考えているようです。

 ただ同時に、アメリカとしても分けきれないという矛盾もあるのです。つまり、過去の侵略戦争を反省しない勢力が、集団的自衛権行使で海外での戦争に乗り出すということになれば、韓国、中国の国民、アジアの諸国民との摩擦や批判を呼び起こさざるを得ません。それはアメリカのアジア政策の遂行にとっても、重大な障害を持ちこむことになります。ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授は次のようにのべました。

 「日本の集団的自衛権行使は良い政策だが、首相の靖国参拝や河野談話、村山談話見直しの兆候と合わさると、良い政策を悪い包装で包むことになる」

 米国政府としても、今の安倍政権の政治姿勢を手放しで賛美するわけにいかない。ここには矛盾があります。

 さらに言いますと、私たちが「靖国」派と呼んでいる、日本の過去の戦争や植民地支配は正しかったという勢力の立場に立ちますと、深刻な問題が引き起こされます。かつて軍国主義日本は、アメリカやイギリスとたたかったときに、「鬼畜米英」と言った。要するに米英は「鬼」や「畜生」のようにひどい連中だとさんざん攻撃して戦争をやったのです。靖国神社を参拝することは、こうした軍国主義日本を肯定することになります。そうするとアメリカやイギリスに対しても、「鬼畜米英」と呼んでいた敵対的な関係に戻ってしまうということになってしまいます。

 ですからまとめて言えば、安倍政権がやっているような歴史逆行の行動は、韓国、中国のみなさん、アジアのみなさんから厳しい批判があるというだけではない。全世界を敵に回す行動なのだということを、私は言いたいと思います。安倍さんは、どうしてもここがわからないらしい(笑い)。私たちはこういう困った首相には、辞めてもらうのが一番だと言っています。

「構想」の実現のために日本共産党の役割は?

日本国民の多数の合意をつくり、政府の方針となるように力をつくす

 ――(研究者・男性)志位委員長の「北東アジア平和協力構想」について、日本のメディアもきている中で、お話しいただきまして、いま日韓関係も大変な時に、わかりやすくお話しいただきました。ただ、通訳が同時でなく逐次通訳なので、反応のずれがあるのは残念に思います(笑い)。改めて大きな拍手を送りたい。(拍手)

 質問したいことは、先ほどの質問と重なるかもしれませんが、行為者の選択の問題です。北東アジアの平和協力における、いろいろな制度選択、ASEANとかTACとか、6カ国協議とかいろいろあるのですが、それにどういうふうに日本共産党の役割をもっていくのかというのが質問です。

 志位 日本共産党の役割としては、「北東アジア平和協力構想」について、関係諸国の政府・政党・国民との対話をすすめていくことも重要ですが、何よりも日本国民のなかでこうした平和構想への支持と合意をつくりあげ、そして日本政府を「北東アジア平和協力構想」の方向に賛成させる立場に立たせることが大切になると考えています。

 私たちは、今日お話ししたように、アジア政党国際会議(ICAPP)などいろいろな場で、この「構想」について語り、「構想」を国際的に広げるために努力してまいりました。各国政府とも話し合ってきました。

 ただ、この「構想」に対して安倍政権は、賛成するとはなかなか言いません。10月上旬の国会の衆議院の代表質問で、私は、この「構想」を提起し、安倍首相に答弁を求めました。さすがに安倍首相も、これに反対はしないのです。しかし、賛成とも言わない。首相の答弁は、「法の支配を順守し、問題があれば話し合いを通じて平和的に解決することが必要だ」ということだけです。この答弁は、北東アジア地域の平和と安定をどうつくりあげていくかについて、彼自身が、何らの積極的なアイデアも持っていないということを、はっきりと示すものとなりました。

 何よりも日本国民のなかで、この「構想」の方向を国民多数の合意にし、そして日本の政府にこの「構想」の方向を認めさせ、賛成の立場に立たせる。これは日本共産党の仕事としてやらなければなりません。

 そのためにも日本共産党が国政選挙でもっと躍進しなければなりません。日本共産党は昨年の東京都議会議員選挙と参議院選挙で新しい躍進を開始しました。この躍進を来年のいっせい地方選挙で、また次期国政選挙で、本格的な流れに発展させたいと思います。そしてこの「構想」が日本国民の中で支持され、そして日本政府の方針になるように、私たちは力をつくしたいと思います。

 ――(質問者の発言)誰が「北東アジア平和協力構想」を進めるかは答えが出たようです。簡単にいえば、日本共産党が政権を取らなければならないということですね。(笑い)

 志位 野党であっても実現のために力をつくしますが、私たちが政権を担ったら、すぐに実現できるでしょう。(笑い、拍手)

国民と一緒に考え、国家を動かす道筋は?

環境、災害などの課題で、国民間の協力を進めることが、「構想」実現につながる

 ――(研究者・男性)委員長が提起された「構想」は国家主導のイメージなのですが、国民をどのように誘導していくのか。いろいろな(日本)共産党の理念、マニフェストはいいと思いますが。3・11大震災と4・16セウォル号惨事のような、一般国民と一緒に考える、生活密着型の政治をどうやって完成して、国家を動かす道筋についてアクションプランがあれば、ご意見をお聞きしたい。

 志位 たいへんに大事な提起だと思います。私たちの「北東アジア平和協力構想」は、地域の平和と安定のために、政府間の枠組みを作っていこうというものです。ただ、その前の課題として、たとえば、環境の問題、災害の問題、エネルギーの問題、そういうソフトな課題と言いますか、非伝統的な安全保障の課題について、この地域で、国民レベルで、いろいろな協力をやっていく、そのことは「北東アジア平和協力構想」を実現するうえでの環境を醸成することになると思います。

 3・11の大震災については韓国国民から大きなご支援をいただきました。そして、セウォル号の事件について、私たちは心を痛め、日本でも可能な支援を行おうという運動が起こりました。このような課題も含めて、両国国民の間での協力を進め、信頼を醸成する。そうした努力が、政府を動かし、「北東アジア平和協力構想」の実現へとつながっていくと考えています。

ハルモニが生きている間に「慰安婦」問題が解決するか?

日韓・韓日議連の「共同声明」は重要な前進――必ず解決するために力つくす

 ――(市民・男性)私は、元「慰安婦」が共同生活している「ナヌムの家」のものです。フェイスブックなどを通じてよく知っていますが、直接お会いできて光栄です。いま生存しているハルモニは55人、平均年齢も80歳を超えています。時間のない状況ですが、公式謝罪、それから法的な賠償ということを求めています。ハルモニが生きている間にこれが実現できるのかお聞きしたい。それからもう一つ、アメリカでは「慰安婦」少女の像というものが建てられていますが、たとえば東京で日本共産党が中心になって、そのような少女の像や追悼の碑を建てることはあるのでしょうか。

 2011年に、日本のすべての国会議員に招待状を出したのですが、実際に来ていただけた方は日本共産党の笠井亮議員だけでした。実際に、いらっしゃるたびに、必ず解決するといわれているのですが。委員長もナヌムの家にお越しになる計画があるのでしょうか。

 志位 日本軍「慰安婦」問題に関するご質問をいただきました。「ナヌムの家」からお越しくださり心から感謝いたします。

 この問題が、ハルモニたちが生きている間に解決するのかというご質問でした。これは必ず解決しなければなりません。

 ここで一つご報告したいのは、一昨日、昨日と、日韓・韓日議員連盟の合同総会がソウルで行われました。そこで全会一致で採択された「共同声明」に、大事な内容が盛り込まれました。

 一つは、こう書いてあります。「慰安婦問題において正しい歴史認識のもとで、当事者達の名誉回復と心の痛みを癒すことが出来るような措置が早急に取られるように日韓双方が共に努力する」

 いま一つ重要なことは、日本側が、「村山談話」「河野談話」の立場を継承することを再確認するとともに、「両国議員連盟は、河野談話、村山談話の精神にふさわしい行動をとることにした」と明記されたことです。

 私たちが、議員連盟の合同総会で、一貫して主張してきたのは、被害にあわれた女性たちの人間としての尊厳を回復する措置を早急に取ること、そして、「河野談話」を継承することはもちろんですが、それにふさわしい行動をとることが必要だということです。このことを、さまざまな機会に日本共産党は主張してきました。

 結果として、先にのべたような内容を盛り込んだ「共同声明」が全会一致で採択されたことは、問題解決に向けた一歩として歴史的な成果と言ってよいと思います。

 被害者の名誉回復の措置を早急に取るということを本気で具体化するなら、公式の謝罪を行い、国としての賠償を行うということになります。「河野談話」の精神に「ふさわしい行動」をとるというなら、一部勢力が行っている「談話」を事実上否定するような「ふさわしくない行動」はとらないということになります。

 これは重要な一歩前進です。ぜひこの前進を手掛かりにして、ハルモニたちが生きている間に、問題解決するために全力をあげることをお約束したい。(拍手)

 アメリカでの「慰安婦」少女の像についてご質問がありました。私の答えはこうです。あのような像が建てられることのないような政治にしていきたい。そのための努力を、しっかりと責任を持ってやりたいということです。(拍手)

 それから、「ナヌムの家」の訪問をというお話でした。今回は残念ながら日程が取れませんでしたが、ぜひ訪問したいと考えています。その時にはよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

日本で良心的活動をしているみなさんの身の安全は?

「河野談話」否定派は、事実と道理にもとづく批判にたいして、一言も反論できない

 ――(研究者・男性)歴史学を研究しています。講演は感動深く聞かせていただきました。北東アジアの安全ではなくて、もう一つの安全について質問したいと思います。みなさんの勇気ある良心的な発言に感動いたしました。日本でこのような活動をなさっているみなさんの身の安全はどのように保証されているのでしょうか。(笑い)

 志位 私たちは日本で、たとえば日本軍「慰安婦」問題などについて、言うべきことはすべて堂々と言います。それに対して右派勢力が、実は反論してこないのです。私は、日本軍「慰安婦」問題についての突っ込んだ見解を3月に発表いたしました。内外のメディアも招待しました。そこには「慰安婦」問題について、私の見解と真っ向から異なる立場に立っている一部メディアも来ました。当然、私に対して反論的な質問をしてくると思っていました。しかし、質問もせずに帰ってしまいました。

 私の見解を発表して、もう半年以上たちますが、右派勢力から、ただの一言も反論はないのです。「河野談話」を否定する勢力というのは、自分たちの仲間うちの狭い世界でだけ通用する議論はするが、事実と道理にもとづいて正面から批判した場合には、反論するすべをもたない。そういう勢力だということを私は感じております。

 「身の安全」と話がずれてしまいましたが、私たちは自主的に警備をして守るようにしています。(笑い)

文化の分野の交流についてどう考えるか?

相互の優れた文化を交流するなかで、相互理解と信頼を深めることは重要

 ――(学生・女性)ソフトな領域で北東アジアの平和協力を考えた時、もう一つ欠かせない分野は、文化の分野だと思います。これに関して日本共産党のビジョンをお聞きしたい。もしなければ、これからどのようなビジョンをもつのでしょうか。

 志位 とても大事な課題ですね。ただ、私たちの党として文化交流をこう進めるという具体的な政策をまとめているという段階ではないのです。今後の課題としていきたいと思います。

 ただ、私自身で言いますと、韓国のドラマが大好きです。「チャングムの誓い」、「イ・サン」、「トンイ」、NHKのBSテレビで見ることができます。私は録画してでもすべて見てきました。ドラマを通じて、韓国の文化、歴史に接することができます。文化を通じての相互理解はさまざまな形で進めていきたいと願っています。

 昨日、私は、映画「マラソン」などでたいへん有名な、鄭胤K(チョン・ユンチョル)監督と対談する機会がありました。鄭監督の「マラソン」は、日本でも多くの人々が見ています。日本でも、あの映画で描かれたような問題にかかわって、同じような体験や、経験をしている人々がいる。大きな感動を呼んでいます。

 さまざまな形で相互の優れた文化を交流するなかで、両国が相互理解と信頼を深めていくことの重要性を、昨日の監督との対談を通じても感じました。

TACに違反する行為があったらどうするか?

制裁などにはならなくとも、強い政治的、道義的批判が向けられる

 ――(学生・男性)経営学科の学生です。TACについてうかがいたいのですが、北東アジア3カ国がTACを結んだ場合に、それが守られればいいのですが、違反する行為があったらどうやって制止することができるのでしょうか。

 志位 TACに違反する行為が起こった場合にどうするのかというご質問でした。TACというのは、それに違反する行為が起こった場合に、締約国間で制裁を行うなど、強い拘束力、強制力を持った条約ではありません。かりに違反する行為があっても、制裁などということにはなりません。ただ、違反すれば、強い政治的、道義的批判が向けられることになるでしょう。

 このように緩やかな条約ですが、同時に、平和の行動規範として高度の政治的重要性を持っている。これがTACです。ASEANの国々は、そういう緩やかな条約であってもまず結ぶことによって、対話を行い、信頼醸成を深め、そして紛争の平和的解決をはかるというように、平和の地域協力の枠組みを発展させてきています。そういうプロセスが、私はたいへんに大事だと思います。

日本の若い学生はどう考えているのか?

日韓の若者の間で、地域の平和と安定にむけたディスカッションを

 ――(学生・女性)アジア問題研究所のフェイスブックを担当しています。今日お会いできて本当にうれしいです。北東アジア平和協力については、私を含めた友だちも含めてどう考えるのかが非常に重要だと思います。私はカンボジアのプノンペンで開かれたASEAN+3ユースフォーラムの韓国代表でしたが、大学生や若い人がたくさんいたのですが、領土問題があって、経済問題の合意がまともに実現できませんでした。志位委員長にお聞きしたいことは、日本の私のような若い学生がどのように考えているのかということをお教えください。

 志位 まだまだ日本国民、そして若いみなさんに、私たちの「構想」が広く知られているという状況ではありません。そこは私たちの努力が必要です。

 ただ、私が、先ほどの講演でも紹介したように、日本国民は、日本の平和を守る手段として、何よりも対話と交渉によって平和を守っていこうという志向がたいへんに強い。日本国憲法9条を守り、生かしていこうという願いをもっている人々が多数派です。ですから、日本の若いみなさんのなかにも、対話と交渉によって、どうやって北東アジアの平和と安定を築いていったらいいのかを、真剣に考えている方々が少なくないと思います。そういう方々のなかに、私たちの「北東アジア平和協力構想」を知らせていくならば、必ず広い方々の支持と共感が得られると、私は思っております。

 私たちの「北東アジア平和協力構想」を一つの素材として、日本の若い方々と、韓国の若い方々との間で、この地域の平和と安定にむけての前向きの合意をつくるためのいろいろなディスカッションをしていただけたら、こんなにうれしいことはありません。

 ――(司会)たくさんの質問をいただきました。以上で、志位委員長の「北東アジア平和協力構想を語る」を終わらせていただきます。(拍手)

「侵略戦争と植民地支配の過ちを認める勢力がいることを知らせたかった」

 最後に、主催者を代表して、高麗大学の李炯植(イ・ヒョンシク)教授が閉会のあいさつを行い、「今回の行事は、(高麗大学)日本研究センター、アジア問題研究所、博物館がいっしょに準備しました」、「安倍首相と韓国の立場は、あまりにも異なります。安倍首相のせいで、日本に対する感情が悪化しました」、「ともに進むべき日本だから、連帯も可能だと考えます。侵略戦争と植民地支配の過ちを認める勢力、人々がいることを知らせたかったのです」と語りました。


 東南アジア友好協力条約(TAC) 東南アジア諸国連合(ASEAN)の安全保障構想の土台となっている条約。1976年に調印。主権尊重、紛争の平和解決、武力行使の放棄を明記しています。現在は57カ国、世界人口の72%が参加しています。


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