2014年11月12日(水)
きょうの潮流
沖縄南部の糸満市にある、ひめゆりの塔と平和祈念資料館。開館25周年の今年、来館者は2千万人を突破し、いまも修学旅行生ら大勢が足を運んでいます▼ひめゆりの愛称は定着しましたが、由来はあまり知られていません。沖縄の県立第一高等女学校と師範学校女子部の生徒たちでつくられたひめゆり学徒隊。両校の併置でそれぞれの校友会誌『乙姫』『白百合』も一つになり『姫百合』に。そこから名付けられました▼本土の捨て石として住民が巻き込まれ、おびただしい犠牲者を出した沖縄戦。ひめゆり乙女の死の彷徨(ほうこう)は惨状の象徴となりました。その実相を知ってもらおうと、資料館では生き残った体験者が語り部になってきました▼最初はつらくて泣きながら話したというひめゆりの証言員たち。開館当初は30人ほどいましたが、現在は3分の1に。全員が80代の後半です。いま彼女たちに焦点をあてた特別展が催されていますが、今後は次の世代が平和の尊さ、命の大切さを訴えていきます▼証言員は戦後70年を前にした政治への不安も伝えています。「ふたたび戦争のやりやすい国にしようとするのか」「憲法9条が変えられようとしている」「もっといい政治をしてほしい」▼米軍の新基地を最大の争点にした知事選は大激戦のまま最終盤。受け継いできた沖縄の思いを背にしたオナガ候補ですが、勝敗の行方は最後まで予断を許しません。1票1票をひろげる、この数日間の奮闘が、ひめゆりの願いを生かす沖縄と日本を開きます。