2014年10月7日(火)
「老齢加算を」請求棄却
生存権裁判 最高裁が不当判決
原告 “運動さらに”
生活保護を利用する70歳以上の高齢者に支給されていた老齢加算の廃止処分取り消しを求める生存権裁判で6日、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、福岡と京都の裁判でいずれも原告の請求を棄却する不当判決を出しました。
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山浦裁判長は、老齢加算の廃止について、厚生労働相の判断の過程と手続きに過誤、欠落はなく、「裁量権の逸脱はない」と判断。老齢加算廃止によって「生活に看過し難い影響を及ぼしたとは評価できない」として、厳しい住環境、食事、人付き合いなどでがまんを強いられる実態を無視しました。
判決後の報告集会には原告団、弁護団、支援者ら約70人が参加。
京都裁判の原告の金原辰夫さん(79)は「これからも皆さんと一緒にたたかっていきたい」と表明。
尾藤廣喜弁護士は「行政に非常に甘い、広く裁量を認めた判決だ」と批判。「国民が生活するうえで岩盤となる生活保護を私たちの手に取り戻すためのたたかいを広げていこう」と訴えました。
「生存権裁判を支援する全国連絡会」の安形義弘代表委員(全国生活と健康を守る会連合会会長)は「住宅扶助など新たな切り下げが狙われている。これまでの運動を振り返りながら、今日を新たなたたかいの出発点にしよう」と話しました。
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貧困実態に目を向けよ
「司法の独立を汚すな」―。最高裁第1小法廷が出した不当判決に、傍聴席には抑えきれない怒りが渦巻きました。
判決後の会見で、福岡裁判の弁護団長の高木健康(たかき・たてやす)弁護士は「福岡と京都の原告団それぞれの主張に対して個別にこたえる判決ではなかった。すでに出ている東京裁判の最高裁判決(12年2月)をほぼ踏襲したものだ」と批判しました。
「憲法25条の『健康で文化的な生活』とはどんな基準なのか」と訴えて、京都市の松島松太郎さん(89)は2005年4月、全国で初めて原告として立ち上がりました。月約2万円の老齢加算があったときは、年1、2回の日帰り旅行や映画を楽しめたと話す松島さん。「食べて寝て、たまにテレビを見てなんとなく過ごすことが文化的なのか」と問いかけます。
判決は、こうした高齢者の貧困の実態に目を向けず、「社会保障削減ありき」で生活保護基準を引き下げる政府の誤った政策を追認。最高裁は、人権と民主主義を守るべき「法の番人」としての職務を放棄したといっても過言ではありません。
今回、最高裁は不当判決を出しましたが、社会保障の拡充を求める運動は全国に広がっています。
安倍政権が、憲法25条2項が国に求める社会福祉の向上・増進に背き、解釈改憲で戦争する国づくりにひた走る中で、これを許さないたたかいがますます重要になっています。(岩井亜紀)