2014年9月7日(日)
NATO首脳会議 軍事対抗に回帰
ロシア対応最重視に
ソ連崩壊後では「歴史的転換」
【ニューポート(英ウェールズ)=浅田信幸】英ニューポートで4、5の両日開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ソ連崩壊後、欧州の周辺国や域外での紛争、国際テロへの対応を主な活動にしてきた軸足を欧州、対ロシア関係に移すことを確認しました。
首脳会議で最大の焦点となったのは、ラスムセンNATO事務総長が「冷戦後、欧州の安全と安定に対する最も深刻な脅威だ」と指摘したロシアによるウクライナ介入問題でした。
欧州防衛に軸足
とりわけ3月のロシアによるクリミア併合は、第2次大戦後に確定した欧州での国境を“武力で”一方的に変更した初の事例として、危機感を募らせました。
このためNATO加盟国でないウクライナのポロシェンコ大統領を首脳会議に招き、軍事的連携を強める共同宣言を発表。旧ソ連圏に属したバルト3国やポーランドなど東欧加盟諸国の懸念にも応えるとして、これらの国に対する軍事的支援態勢を強化することも確認しました。
1991年のソ連崩壊後、NATOはロシアとの融和政策をとり、97年には「互いに敵とみなさない」とする「基本文書」を締結。一連の東欧諸国のNATO加盟を視野に、これら新規加盟諸国には常駐部隊や核兵器の配備をしないことを約束し、2002年には「NATOロシア理事会」を創設しました。
この間、NATOは90年代のボスニア紛争で域外介入に踏み出し、2001年米同時多発テロ後には西アジアに位置するアフガニスタンの治安回復のための主要作戦を担い、11年に反政府デモから内戦状態に陥った北アフリカのリビアを爆撃。域外に多発する地域紛争や国際テロといった「新たな脅威」への対応が焦点となってきました。
このため、ロシアの“潜在的脅威”を鮮明にしたウクライナ危機をきっかけに、NATOが活動の軸足を本来の欧州防衛に戻した今回の首脳会議の決定はメディアから「歴史的」と形容されます。
「世界の警察官」
他方で、当面のウクライナ危機対応として打ち出されたNATO即応軍特殊部隊は、欧州に限定されず「世界のどこであっても展開される」(オバマ米大統領)ことが想定されており、NATOが「世界の警察官」として振る舞う意図も表明したものといえます。
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