2014年9月4日(木)
IMFラガルド氏を正式捜査
仏閣僚時に「職務怠慢」で国家損失か
揺れる専務理事ポスト
【パリ=浅田信幸】国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が、フランスのサルコジ前政権の経済・財務相(2007〜11年)在任中、「職務怠慢」により国家に損失をもたらした容疑で、仏司法当局による正式捜査を受けていることが、国内外で波紋を広げています。
閣僚の在任中の犯罪を裁く共和国法院が8月26日、ラガルド氏に対し4度目となる事情聴取を行い、捜査を開始しました。
捜査は、サルコジ氏の支持者で事業家のベルナール・タピ氏が、破綻後に国有化されたクレディ・リヨネ銀行を相手取った損害賠償請求訴訟での調停を通じて、公的資金から4億ユーロ(約550億円)を不適切な形で受け取ったとされる問題に関連しています。
ラガルド氏は調停に直接関与しなかったものの、調停に異議を唱えなかったといわれます。ルモンド紙は「ラガルド氏は国家財政の歯止め役を果たさなかったように見える」と報じました。
職務怠慢罪は、公的権限を持つ人物の怠慢によって、公的資金などの財産が第三者によって損なわれたり、不正取得されたりした場合、最大で禁錮1年、罰金1万5000ユーロが科されます。
フランスでは不正行為の疑いがあると司法当局が認めた場合、正式捜査が始まります。これは訴追の前段階で、必ずしも裁判につながるとは限りませんが、公職にある人物にとって政治的、社会的打撃は小さくありません。
ラガルド氏はIMF専務理事を辞職する意向は「ない」としており、IMF理事会も8月29日、「ラガルド氏が職務を遂行できることを確信する」などと表明しました。
IMF専務理事をめぐっては、同じフランスのストロスカーン氏が3年前にスキャンダルで辞任。もしラガルド氏が連続して辞任する事態になれば、フランスの面目丸つぶれとなるだけでなく、創設以来、欧州勢が独占してきた専務理事のポストを新興国に譲るべきだとする圧力が一段と強まることが予想されます。