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2014年8月20日(水)

患者申し出療養制度は

混合診療拡大を狙う

薬の安全性、保険外増の危険

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 日本は、誰もが同じ金額で同じ医療を受けられる「国民皆保険制度」です。ところが、これが崩されかねない動きが出ています。安倍内閣がねらう「患者申し出療養制度」は、患者の申し出により未承認の医薬品などの使用を認める制度です。審議会での議論を前に、焦点を見てみると―。

 現在、保険がきく医療と、きかない医療を一緒に行う「混合診療」は原則禁止されています。安全性などが確認されない医療が広がったり、お金のあるなしで医療に差が出ないようにするためです。

全額自己負担も

 ただし保険適用を検証中の先進医療など「評価療養」、保険適用を前提としない「差額ベッド」など「選定療養」については、「保険外併用療養制度」として例外的に認めています。これらは全額自己負担となり、100万円をこえるものもざらです。

 安倍内閣が打ち出したのは、この仕組みに「申し出療養」制度を新設するものです。

 患者の申し出にもとづき、臨床研究中核病院(東大など15カ所)に申請し、前例がある場合は2週間で承認。前例がない場合は、国が安全性や有効性を6週間で判断します。

 保険適用に向けて、実施計画を作成し、国が確認、結果報告を求めるとしています。

 政府は「保険外併用療養制度の一つである先進医療と同様の仕組み」(答弁書)と説明していますが、混合診療を拡大する危険性を抱えています。

 混合診療の原則禁止は財界が「岩盤規制」と攻撃。安倍首相も「既得権益を打ち破るドリルの刃になる」といって見直す姿勢を強調していました。これを受けて政府の規制改革会議は3月、「選択療養」制度を提案しました。

 しかし、混合診療の事実上の解禁となるため医師会や患者団体が反対。これに対し「成長戦略」で医療・薬品企業の競争力強化・市場拡大をねらう安倍首相は、「困難な病気とたたかう患者が未承認の医薬品を使えるように検討を」と指示。こうして出されたのが「患者申し出療養」です。

 患者の申し出で、どんな治療法や医薬品でも申請できることは「選択療養」と変わりません。その後、国が安全性などを確認し、保険適用に向けた計画を持つ点が異なっています。各界の批判を受けて一定の要件を設けたものですが、危険性は消えていません。

審査期間の短縮

 審査期間は、現行の6カ月から6週間と5分の1に短縮。安全性や有効性が不確かな医薬品などが使われる危険性があります。

 「評価療養」は保険適用が前提となっていますが、「申し出療養」は「治験等に進むための判断ができるよう」としているように評価プロセスに移行する判断材料とされ、保険外にとめ置かれる危険性があります。審議会でどう具体化されるかが焦点になります。

 保険適用となれば治療がすすんで結局は医療費の節減につながることや、開発した企業にとっても広く普及したほうが利益につながることが指摘されています。患者団体は「必要な医療は、速やかに保険収載をして誰もが安心して最高水準の医療を享受できることが私たちの願いです」(日本難病・疾病団体協議会)と声を上げています。保険外診療の拡大ではなく、保険適用によって国民皆保険を豊かにしていくことが焦点になっています。 (深山直人)


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