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2014年7月14日(月)

主張

STAP論文問題

不正の温床を根本からただせ

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 理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが1月に発表し、「新たな万能細胞の発見」として注目された「STAP細胞論文」は、著者自らが論文を撤回する事態となりました。発表直後から数多くの疑惑が指摘され、理研の調査委員会が、論文の根幹となる画像に「ねつ造」「改ざん」などの不正行為があると認定している中での論文の撤回です。

研究倫理の確立

 研究不正は科学に対する社会の信頼を裏切る行為であり、小保方氏らの責任は重大です。こうした事態を防止するために、研究者や研究機関には、研究倫理確立の自律的な努力を行うことが、社会に対する責任として求められます。

 日本学術会議の「科学者の行動規範」(2006年制定、13年改訂)は、研究不正を防止するために、「正直、誠実に判断、行動」すること、研究結果の「正当性を科学的に示す」努力、「不正行為抑止の教育啓発」などを科学者に求めています。

 こうした観点での研究者自身による自己点検は避けられません。大学院における研究者養成でも研究倫理の教育があらためて見直されるべきです。

 同時に、画期的成果として発表しながら不正発覚で論文を撤回するという事態を招いた理研の責任も問われなければなりません。

 理研の外部有識者による「研究不正再発防止のための改革委員会」が6月にまとめた提言書によれば、理研発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)は、センター長も承知のうえで、研究者として未熟な小保方氏をユニットリーダーに採用しました。STAP研究はセンター内でも秘密とされ、研究者同士でデータの検証もされず、実験データもまともに管理されていませんでした。

 研究機関が守るべき最小限のルールを無視したものです。それは、「iPS細胞研究を凌駕(りょうが)する画期的な成果を獲得したいとの理研CDBの強い動機があった」からだと指摘されています。こうした成果至上主義こそ、研究不正の温床といわなければなりません。

 その背景には、過度に競争的な研究環境があります。

 政府は、大学・研究機関の基盤的経費を年々減らし、一部の「革新的」研究に多額の資金を集中させました。また、大学や研究機関に任期制などの非正規雇用を導入、拡大しました。理研では研究者の8割以上が、理研CDBでは研究者すべてが任期付の採用です。研究者は、資金とポストの獲得競争のために短期で成果を出すことを迫られています。

競争的環境の是正

 科学技術振興機構の研究者の調査によれば、競争的資金の重点配分や任期制など競争的環境が強まった2000年前後から、研究不正の事例が急増しています。競争を激化させ性急な成果主義をあおる政策が、不正を助長したことは明らかです。ここにこそメスを入れるべきです。

 研究不正を生まないためには、研究倫理の確立、研究者養成の充実とともに、不正の温床となっている成果至上主義とそれを助長する過度に競争的な政策をたださなければなりません。基盤的経費の拡充や任期付でない研究職の拡大など安定した研究環境こそ、研究の健全な発展の保障です。


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