2014年6月16日(月)
きょうの潮流
そんなに甘い舞台ではないよ。改めて、そう教えられたような一戦でした。サッカーW杯初戦に臨んだ日本。先制点を取りながら、コートジボワールに逆転負けを喫しました▼日曜の午前。歓喜と失意が列島をつつみました。本田選手の豪快なシュートがゴールに突き刺さった前半。同じ形から立て続けに失点を許した後半。主将の長谷部選手は「自分たちのサッカーを表現できなかった」と無念さをにじませました▼厳しくなったグループリーグの突破。しかし、何が起きるかわからないのがスポーツ。現に前回優勝のスペインが初戦で大敗するなど、今大会も混沌(こんとん)とした争いになっています。世界の強豪が集う場所に“絶対”の文字はありません▼それにしても若者を中心にした熱狂ぶりはすさまじい。選手と一体になったような疑似体験。一つのボールの行方に一喜一憂し、喜怒哀楽を大勢と共有する。街にくりだして気分や感情を分かち合う。そんな姿が今回もあちこちでみられます▼前に話を聞いた社会学者は「いまの世の中は若者の自己表現を抑えつけ、その場を奪っている」と語っていました。だから、それを生き方と重ねているスポーツ選手を応援し、自身の思いを同化させようとしているのだと▼一部の暴徒は論外ですが、W杯は生身の人間同士が行動と感情を表し、つながりあう場になっています。日本の次戦は20日のギリシャ戦。今度こそ、積み上げてきた攻撃サッカーをブラジルの地で表現し、劣勢をはねのけてもらいたい。