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2014年6月14日(土)

混迷 イラク情勢

過激派が首都侵攻も 住民はどう見る

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 【カイロ=小泉大介】イラク北中部の都市を次々と制圧した過激派武装組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は12日の声明で、「われわれはバグダッドに進軍する」と首都侵攻の意思を示すなど、情勢は緊迫の度をさらに増しています。国民は今回の事態をどのように見つめているのでしょうか。


処刑・拷問…恐ろしい 家出られない

首相の失政、明らかに 政治で解決を

 「ISILは完全に街を支配しています。昨日(11日)は私の店にもメンバーがやってきて、今後は彼らのいうことに従うよう圧力をかけていきました。政府軍兵士などに対する処刑や拷問も始まっているようでとても恐ろしい。いま家族で避難の準備を始めたところです」

 北部モスルでパン屋を営む男性、モハメド・モスリさん(36)は12日、本紙の電話取材にこういいました。

 同じくモスルの女性小学校教師(32)は、武装勢力の報復が恐ろしいので名前は出さないでほしいとしたうえで、「政府軍兵士は殺害されることが怖くて、軍服を脱いで一人残らず逃走してしまいました。いまは誰も市民を守ってくれず、家から一歩も出られません。私たちは米軍による侵略から10年以上たったいまも、戦争状態のもとに置かれているのです」と訴えました。

 ISILへの恐怖と憤りの気持ちを語る人々。一方で口をそろえたのが、過激派が闊歩(かっぽ)する状況をつくり出してしまったマリキ首相の失政であり、その大本にある米軍の戦争と占領の罪でした。

 この点について、バグダッド大学のカゼム・ミクダディ教授はこう指摘しました。

 「イラクを破壊した米国は、イスラム教シーア派とスンニ派との宗派間の合意ではなく対立の構図もつくりました。米軍が撤退して以降は、シーア派のマリキ首相が宗派主義にもとづく政治を推し進めた結果、治安が極度に悪化し、“破たん国家”のモデルのような国になってしまいました。今回の事態は、過激派の力を示したというよりも、首相の政策の失敗を明らかにしたものだといわなければなりません」

 過激派勢力の攻勢に対しマリキ首相は、米軍に空爆を要請したと報じられるなど、力による対応で事態を乗り切る姿勢を鮮明にしています。しかし、ミクダディ教授は、「軍事対応は事態をさらに悪化させるだけです。イラクの全政治勢力による対話で宗派対立を終わらせ、過激派勢力を孤立させることが不可欠です」と力説します。

 前出の女性教師も、「政府はイラク西部で過激派掃討作戦を行ってきましたが、成功どころか混乱を拡大しただけでした。問題を根本的に解決するには政治的な方法しかありません。もう戦争は本当にこりごりです」と声を上げました。


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