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2014年5月28日(水)

主張

行使「事例集」

必要のなさが浮き立つばかり

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 集団的自衛権の行使が必要だとする事例を政府が示せば示すほど、逆に必要のなさがますます浮き立ってくる―。集団的自衛権行使など安全保障法制について検討する自民・公明両党の与党協議(27日)に提示された「事例集」のことです。安全保障担当の元政府高官など専門家に事例を論破されるたび、新たな事例を持ち出して水ぶくれさせた形ですが、「非現実的」な想定に変わりはありません。

“脅し”をエスカレート

 「事例集」は、15事例のうち5事例が米軍艦船を自衛隊艦船が守るという「米艦防護」に集中していることが大きな特徴です。

 5事例とは、(1)米本土が武力攻撃を受け、日本近隣で作戦を行う(2)米国を巻き込む武力攻撃が発生し、弾道ミサイル発射の警戒に当たっている(3)日本近隣で武力攻撃が発生し、公海上で武力攻撃を受けている(4)同じく邦人を輸送している(5)平時に弾道ミサイル発射の警戒に当たっている―という状況にある米艦の防護です。

 (1)は、「米本土が日本近隣の攻撃国から大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルによる大規模な武力攻撃を受けた」というものです。北朝鮮による米本土への核ミサイル攻撃というおどろおどろしい想定ですが、専門家は「あり得ない」と断言します。万万が一、北朝鮮がそうした攻撃を行うとすれば、軍事超大国である米国の報復を“覚悟”します。このため米国の報復攻撃の拠点となる在日・在韓米軍基地やグアム、ハワイなどを米本土とほぼ同時に攻撃することは明らかです。

 「日本に対する武力攻撃は発生していない」(事例集)という想定はあまりにも意図的です。日本有事を含めた西太平洋地域での全面戦争は必至です。そうした状況下での米艦防護はこれまでの政府見解によれば、日本への武力攻撃に対する個別的自衛権の問題です。

 (2)や(3)は、朝鮮半島有事を想定しています。これも「あり得ない」というのが専門家の共通認識です。通常戦力で米韓連合軍は北朝鮮軍を圧倒しています。日本が米艦防護を求められることは考えられないといいます。

 そもそも米艦防護は技術的に不可能だと指摘されています。現代戦で艦船攻撃用兵器は魚雷と対艦ミサイルですが、いずれも、離れた地点にいる艦船では通常防御できません。弾道ミサイル発射警戒時の米イージス艦は防空能力が低下するといいますが、その欠陥はすでに改修されているという指摘もあります。結局、「米艦防護」という口実で、求められもしない戦闘に自衛隊を参加させる狙いが透けて見えます。

 朝鮮半島有事は、(4)の想定にもなっています。しかし、邦人退避は日本政府の第一義的な責任です。有事の兆候は事前に察知でき、その段階で民間機などによる退避を実施することが重要です。残る邦人については、日本政府が1993年、米軍に頼らず自衛隊によって救出する計画をつくっていたことが明らかになっています。

海外での戦争が狙い

 「事例集」は、集団的自衛権行使容認ありきの想定ばかりです。国民を脅す材料をエスカレートさせても、まともな検討に耐え得ません。「海外で戦争する国」になる狙いを隠し、国民を欺くことに熱中しても破綻は明瞭です。


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