2014年5月21日(水)
きょうの潮流
きょうは二十四節気の一つ、小満(しょうまん)です。陽気がよく、万物が次第に長じて天地に満ち満ちていくころ。列島はあいにくの走り梅雨ですが、あらゆる命が日を浴びて輝く季節です▼一度は光りを奪われたこの人も生の喜びを実感しているでしょう。半生にわたり死刑囚として捕らわれながら、再審が決まって釈放された袴田巌(いわお)さん。おととい、53年ぶりに上がった後楽園ホールのリングで名誉チャンピオンベルトを受け取りました▼19日は、ボクシングの日。1952年に白井義男さんが日本人初の世界チャンピオンになった日です。プロボクサーで日本ランカーだった袴田さんも憧れたチャンピオンの記念日。協会から贈られたベルトを腰に巻き、誇らしげにファイティングポーズをとりました▼獄中から無罪を訴えた袴田さんを支えてきたボクシング界。「救う会」に多くの関係者が参加し、世界チャンピオンらが口をそろえて再審を要求。チャリティー試合や署名活動にもとりくみました▼姉の秀子さんによると、この日、袴田さんは病院からの外出届に「後楽園へ帰る」と書いたそうです。長期間の拘禁生活で心身ともに衰弱した状態だといいますが、生を輝かせていたころを懐かしく思い出したのでしょう▼「権力に勝って自由になった」と仲間に報告した袴田さん。再審開始の決定もつかの間、静岡地検はそれを不服として即時抗告しました。完全に無罪を勝ち取り、心から生きる喜びを味わえるまで。不屈の闘士のたたかいはつづきます。