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2014年5月19日(月)

要支援者の大多数を専門的ケアから排除

厚労相が示した「基準」

「重度化加速」批判強まる

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 衆院で可決された医療・介護総合法案。政府は介護保険で「必要な人は専門的サービスを受けられる」と繰り返してきましたが、田村憲久厚労相の国会答弁で要支援者の大多数を専門的サービスからしめだす「基準」が明らかになりました。「やはり必要なサービスを受けられなくなる」「重度化が加速する」と批判の声があがっています。

 総合法案で要支援者は、専門的サービス(訪問介護と通所介護)を保険給付では受けられなくなり、代わりに市町村が「代替サービス」を提供することになっています。政府は「専門的サービスが必要な人は市町村が適切に判断して提供する」と説明してきました。

 ところが日本共産党の高橋ちづ子議員の追及に対し、田村氏が示した「専門的サービスが必要な人」の「基準」は、きわめて狭いものでした。(1)日常生活に支障を生じる認知症の人(2)自分の生活管理ができない人(3)コミュニケーションなどの社会性を構築できない人(4)退院直後で集中的な支援が必要な人―の四つです。

 認知症の該当者については「日常生活自立度II」を例にあげ、要支援者の7〜8%(2012年度)にあたると説明。「その中にも専門的サービスを受けない人もいるかもしれない」と述べました。

 「日常生活自立度II」とは「日常生活に支障をきたす症状や行動が多少みられる」とされるケースです。

 「自立度II」より低い「自立度I」は「何らかの認知症を有する(日常生活はほぼ自立)」とされるケースで、田村氏の説明では専門的サービスの対象外になります。12年度のデータでは認知症と判断された人が要支援者の約5割にのぼりますが、その8割以上は「自立度I」です。大多数の人が対象外にされてしまうのです。

 認知症以外の「基準」について厚労省老健局振興課は「統計的な根拠はない」と説明。「基準ではなくイメージ」だとして、市町村の裁量に委ねる姿勢です。市町村が行う要支援者向け事業の費用には総枠が設けられており、専門的サービスが切り捨てられていくことは必至です。

 全国に約1万1千人の会員がいる「認知症の人と家族の会」の田部井康夫理事は「『自立度II』の認知症の人や退院直後で状態が安定しない人は『要介護』と認定される原則であり、こんな基準では要支援者の大多数が排除される。論外です。医学的な診断基準に照らしても生活に支障のない認知症などありえません。『自立度I』など初期の認知症の人を専門的ケアから除外するのは、早期の対応が重要だという国の認知症施策とも矛盾します。そもそも要支援とは専門的ケアが必要だという認定であり、外していい人は一人もいません」と話します。

 全日本民主医療機関連合会の林泰則事務局次長は「基準が漠然とした『イメージ』だというのなら、自治体の恣意(しい)的な判断でいくらでも対象者を狭められます。要支援と認定された人を専門的支援から外す枠組みそのものが筋違いなのであり、撤回するしかありません」と指摘します。

グラフ:認知症の人も専門的サービスの対象外に

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