2014年4月20日(日)
米医療保険 800万人が加入
皆保険には ほど遠く
オバマ新制度
【ワシントン=島田峰隆】オバマ米大統領は17日、最重要政策と位置付ける医療保険改革法(通称、オバマケア)に基づく保険加入者数が目標の700万人を大きく超え、約800万人に達したと発表しました。政府は“無保険者の解消への一歩”と強調しますが、国民皆保険制度の実現を求める人々からは批判が出ています。
医療保険改革法は2010年3月に成立。経済的事情から高額の保険料が払えず無保険になっている人の解消が目的とされています。国民に民間医療保険への加入を義務付け、昨年10月から政府のウェブサイトで、保険を選び、政府の補助金で加入する登録手続きが進んでいます。
ただ政府が関わるとはいえ、仕組みはあくまでも民間保険会社の商品の購入。「全国看護師組合」(NNU)のマイケル・ライティ公共政策局長は、部分的に「前進」と評価しつつ、「オバマケアは“政府がある程度管理する民間医療保険制度”にすぎず、国民皆保険には遠い道のりだ」と指摘します。
財政的に弱い中小企業が保険料を払い続けられず、倒産や解雇、保険の喪失を招いたことはこれまでもありましたが、ライティ氏によると、オバマケアのもとでこれが減る見通しはありません。
また、政府には保険料や薬価の高騰を防ぐ手段がありません。オバマケアを完全実施しても3000万人以上が無保険者として残る見込みです。
ライティ氏は、オバマ氏が当初、公的皆保険制度を目指しながら、野党共和党などの抵抗で後退したと指摘。その背景に「保険業界、製薬業界の意向がある」と批判します。
NNUは、世論調査では国民の半数以上が公的保険を支持しているとして、州単位で公的医療保険制度を導入して国民皆保険を実現するよう提案。米国の医療保険制度を批判した映画「シッコ」のマイケル・ムーア監督もニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で「オバマケアは民間保険会社を支援する計画」と批判し、公的な国民皆保険制度を実現するよう求めました。
米国の医療保険制度 公的保険は高齢者や障害者向け(メディケア)、低所得者向け(メディケイド)、退役軍人向けなど一部が対象で、日本のような国民皆保険制度はありません。国民の多くは民間の保険に加入するか雇用者提供の保険に加入します。保険料が高いことに加え、失業や転職を機に保険を失う人が絶えず、人口の6人に1人に相当する5000万人近くが無保険です。