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2014年3月12日(水)

ロシアのウクライナ介入

「侵略」批判できぬ安倍政権

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 ロシアが「自国の軍人・軍属保護」を口実にウクライナ南部のクリミア編入の動きを強めていることに対して、国際社会は厳しい非難の声を上げ、米国などは「侵略行為」と断罪しています。一方で、日本政府の反応の鈍さが目立っています。(竹下岳)


 安倍晋三首相は10日の記者会見で、「すべての当事者に対し、自制と責任をもって慎重に行動するよう求める」と述べ、ロシアの責任をあいまいにしました。制裁を求める米国にも同調していません。

 これは、プーチン大統領訪日を秋に控え、領土問題交渉への影響を懸念しているからです。相手の顔色をうかがう卑屈な姿勢です。

事実上の肯定

 それだけではありません。自民党の石破茂幹事長は「(ロシアの軍事介入は)自国民保護であり、日本流に言えば邦人救出だ。動乱、騒じょう状態で自国民を救出するのは、武力介入とはニュアンスを異にするのではないか」(3日の記者会見)とまで述べ、事実上、ロシアの介入を肯定したのです。

 こうした発想は石破氏特有のものではありません。歴代政府の憲法9条解釈の全面的な改変を狙う政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の第6回会合(2月4日)では、外国で発生した「重大・急迫な侵害」で邦人の生命に危険が及び、当該政府が侵害を排除する意思・能力を持たない場合、「当該外国政府の同意の有無に関わらず(自衛隊が)対応すべき」だと提案されました。(図)

 しかし、相手国の同意なしの行動は明らかな侵略行為であり、憲法が禁じた海外での武力行使に該当します。

「定義」言えず

 こうした安倍政権、自民党の姿勢の根底には、日本の過去の侵略戦争を肯定するために、「侵略の定義」を言えなくなっている矛盾があります。

 昨年4月から5月にかけて、日本の過去の侵略戦争を美化する靖国神社に閣僚が参拝し、安倍首相が日本の植民地支配と侵略を反省した「村山首相談話」の見直しを示唆。これと軌を一にして、首相が国会で「侵略の定義は定まっていない」と繰り返し答弁し、国際社会の非難を浴びました。

 「侵略の定義は定まっていない」というのは事実に反します。1974年に日本も参加して国連総会で決定された「侵略の定義に関する国連決議」は、「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国連の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使」と明確に定義しています。

 これに従えば、ロシアのクリミア編入の動きは侵略行為そのものです。しかし、安倍政権は「侵略の定義」を知らないふりをすることで何も言えなくなっているばかりか、海外派兵拡大の口実にまでしようとしているのです。

 領土問題も同じです。旧ソ連による千島列島の占領は、第2次世界大戦後の「領土不拡大」原則を踏みにじったスターリンの覇権主義によるものです。侵略の定義をあいまいにすれば、今回、ロシアが取った覇権主義的な態度にも毅然(きぜん)とした対応を取れなくなってしまうのです。

 首相は「主張する外交」を標ぼうしています。しかし、戦後世界でもっとも非難されるべき侵略行為に対して毅然たる対応を取れずに、何を「主張」するのでしょうか。

図

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