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2013年12月29日(日)

タイ 深まる政治対立

反政府派、既得権に固執

首相 各層代表で改革を提唱

反政府勢力 選挙延期・軍介入を要求

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 【バンコク=松本眞志】タイ野党・民主党のステープ元首相が11月から先導している「政権打倒」街頭行動は激化する一方です。インラック首相は12月9日、「決定を国民の意思にゆだねる」として議会を解散し、総選挙実施を宣言。憲法改定や汚職根絶を課題とする各層代表から成る「国家改革評議会」の選挙前の設置を呼びかけています。一方、反政府勢力は、任命制の「人民議会」の設置などの「政治改革」、総選挙延期を要求し、軍に介入を要請。対立は民主主義の根幹にかかわる問題になっています。


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(写真)タイの首都バンコクの中心にある民主記念塔周辺に陣取る反政府勢力の人々=24日(松本眞志撮影)

 発端は11月の恩赦法案の下院での可決。事実上の海外亡命生活を送るタクシン元首相の帰国につながる同法案は、野党の反発から上院で否決されました。反タクシン派はこれを政権打倒の好機ととらえ、「インラック(タクシン元首相の妹)政権退陣、タクシン一族追放」へと要求を過激化させました。

 反政府勢力は、なぜタクシン一族の排除にこだわるのか―。現地識者は、その背景に新興資本家勢力と既得権層との対立があると言います。既得権層とは中間層や保守の富裕層、軍高官などです。

 タクシン氏は1986年に携帯電話会社を立ち上げて成功。タクシン氏ら新興財閥の登場は、旧来の財閥にとって大きな脅威となりました。

 98年には新党「タイ愛国党」を創設して2001年に首相に就任。政権発足後、貧困対策として▽農民負債の返済猶予▽低額の健康保険実施▽庶民銀行や中小銀行の設立―などの政策を実施し、北部や東北部の農民、首都バンコクの貧困層を強固な支持基盤にしました。

 地元紙ネーションの元編集長カビ・チョンキッタボーンさんは、「北部や東北部の貧困層はおおむね現政権を支持し、南部の比較的教育を受けた裕福な市民層は政府を批判している」と述べ、この政治対立が経済的・地域的な対立でもあると指摘。「これらは歴史的なタイ国内の貧富の差に根差したものだ」と説明します。

 さらに、タクシン氏の政治運営は「民間企業の経営手法を政治に持ち込む」ものと評されました。官僚よりも側近顧問を中心に政策を立案、経済政策にかかわる主要人事の大規模異動など、それまでの伝統を急激に改変し、既得権層の権益に踏み込みました。

 05年に第2次タクシン政権が誕生しますが、06年に軍がクーデターでタクシン政権を打倒。直接のきっかけはタクシン氏の王室軽視の言動でしたが、既得権層の積極的なクーデター後押しがありました。その後、国家汚職防止法違反罪で08年10月に禁錮2年の実刑判決を受けました。

 タクシン氏は国外にありながら、現在でも有権者で多数を占める貧困層や農民層の支持を受けています。「タイ愛国党」の後身の「国民の力党」や「タイ貢献党」は相次ぐ選挙で勝利。一方で、民主党など反タクシン派が選挙で勝利できない状況が続いています。


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