2013年12月23日(月)
与野党対立 改革道半ば
青年の自殺から3年
チュニジア
チュニジアでベンアリ独裁政権崩壊のきっかけとなった青年の自殺から17日で3年が過ぎました。同国では2年前に暫定政府が発足しましたが、イスラム主義の最大与党と世俗野党勢力が激しく対立し、新憲法制定、国会・大統領選挙実施をゴールとする政治プロセスは道半ばです。(カイロ=小泉大介)
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「この町の失業率が25%にまで達しているように、独裁崩壊後も私たちの暮らしはまったく改善していません。住民は、与党指導者たちが権力を独占して自らの利益だけを実現しようとしてきたことに怒り心頭です」―チュニジア中部の小都市シディブジドに住む無職の男性、ユセフ・フセインさん(32)は憤ります。
2010年12月17日、職に就けずシディブジドで野菜の路上販売をしていたムハンマド・ブアジジ青年が「無許可販売」を理由に警察に摘発され、抗議の焼身自殺を図りました。その報は瞬く間にインターネットなどを通じて全土に伝わり、連日の大規模デモは1カ月足らずでベンアリ前大統領を国外逃亡へと追い込みました。
■暮らし悪化
その後、11年10月の制憲議会選挙を経てイスラム主義政党アンナハダ主導の暫定政府が発足します。しかし、世俗派野党勢力は政治の「イスラム化」に反発を強め、今年2月と7月に野党指導者が何者かによって相次ぎ暗殺されてからは対立が決定的となって政治プロセスは停滞。経済と治安の悪化は国民生活に深刻な状況をもたらしています。
首都チュニスの男性会社員、ファウジ・ダアスさん(29)も、「アンナハダは暫定政府発足時、1年間で45万人の雇用をつくるといいましたが完全なウソでした。給料は上がらないのに物価は2倍に跳ね上がり、暮らしは悪くなるばかりです」と語ります。
ただ国民の抗議の声に押され、政治の舞台でようやく変化が生まれようとしています。
今年10月、労働総同盟(UGTT)の仲介で、与党と野党の「国民対話」が始まり、今月14日には、現産業相で無所属のメフディ・ジョマア氏を新たな暫定政府首相に指名しました(一部野党は退席)。同氏は18日には中立政府の組閣を開始。「透明で信頼に足る選挙の実施」「経済危機の打開」に向けた決意を表明しています。
■公正めざし
「チュニジア社会に大きな影響力を持つUGTTの仲介で与野党対話が実現したことの意義は小さくありません」と語るのは北部マヌーバ大学のアラヤ・アッラーニ教授。「問題は山積していますが、革命は表現の自由など重要な成果も生み出しています。市民として成熟しつつある国民が政治への関与を強めていけば、道は開けるでしょう」。
冒頭のフセインさんも力を込めます。
「ブアジジさんのように革命に命をささげた人のためにも、ここであきらめるわけにはいきません。私たちは社会的公正という目標を実現するまで声を上げ続けます」