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2013年10月11日(金)

首長の権限を強化

中教審教育制度分科会が審議

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 中央教育審議会(文科相の諮問機関)の教育制度分科会は10日、「今後の地方行政の在り方について」の「審議経過報告」を審議しました。数日中にまとめます。

 同分科会が示した方向は(1)首長を執行機関とし教委を首長の付属機関とするA案(2)教委を執行機関とするが現行よりも権限を縮小するB案―の2案。

 A案は、教委が首長の付属機関に格下げされ、勧告などしかできなくなり、その時々の首長の意向でストレートに教育行政が動かされる仕組みです。

 B案では、教委は執行機関の性格を維持しますが、基本方針など限られた事項について審議・決定するものです。教委の権限について、基本方針のほか教科書採択などをあげる一方、「首長の意向を反映しやすくするため、教育長の罷免要件を拡大することや、教育長の任期を現行の任期(4年)より短縮することも検討する必要がある」としています。

 現行制度では、教委は首長から独立して教育行政を執行する機関。2案は首長や教育長の権限を強化するものですが、住民や教育関係者の意向の反映や、子どもの命にかかわる事態への迅速な対応など、求められている改革方向はありません。

 同分科会は今後、関係団体のヒアリングを経て、具体的な制度設計を検討し、審議のまとめを中教審本体に提出する予定。中教審は年内にとりまとめて文科相に答申し、政府は来年1月の通常国会に教育委員会「改革」法案を提出する予定です。

解説

求められているのは住民目線と憲法理念

 もともと教育委員会は1948年、戦前の軍国主義教育の反省に立ち、教育行政を首長の一般行政から独立させ、教育を権力支配から守る制度として発足しました。しかしわずか8年後の1956年、自民党政権が現行制度に改悪。重要な役割を担う教育委員の住民公選は廃止され、多くの教育委員会が国の意向に忠実な上意下達的な組織となり、政府でさえ「形骸化」(1986年臨教審答申)を認めるほど行き詰まっていました。この間のいじめ自殺への隠蔽(いんぺい)的対応もその一つです。教育委員会の民主的改革は喫緊の課題です。

 ところが今回の方向は民主化ではなく、教育委員会を首長の下に組み込もうというものです。とくに自民党教育再生実行本部の主張に近いA案では、教育委員会は方針決定の権限を失い、首長の付属機関に格下げされ、教育行政は首長直轄となります。中教審の議論でも「市長、知事の顔色を見ながら校長が学校運営する、こんなことになったら教育の最も大事なところが死んでしまう」と懸念の声があがりました。

 教育委員の合議で方針決定する現行制度は、教育への乱暴な権力支配への一定の歯止めです。橋下徹大阪市長による職員への違法な「思想調査」は、教育委員の反対で教育職員には実施されませんでした。松江市での「はだしのゲン」排除問題は教育長の独断で行われ、教育委員の合意がなかったとして撤回とされました。その歯止めを失うことは重大です。

 問題の背景には、改悪教基法の具体化に固執する安倍政権の姿勢があります。教育の権力支配を無制限にする改悪教基法にそって教育制度を改変しようというものです。審議のあり方も、まず安倍首相の教育再生実行会議が教育委員会を「審議」機関とするなどの枠を決め、国の正式な審議会がその枠内で検討するという異例なものでした。首長や教育長の暴走への歯止めをなくす構想をゴリ押しすることは、広範な教育関係者との矛盾を深めることになります。

 教育委員が、住民の目線で子どものことを考え、その自治体の教育方針や事務局の日常業務をチェックするとともに、憲法や子どもの権利条約の理念を教育の分野で具体化する役割を果たすなど民主的改革こそが求められています。

 (浜島のぞみ)


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