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2013年7月28日(日)

戦争の歴史に向き合う街 ベルリン

道や駅にナチスの犠牲者記す碑…日常が教育の場

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 ベルリンのユダヤ人墓地跡で取材している時でした。

 「私たちの国の歴史は、お国ではきちんと知られているのでしょうか」。突然ドイツ人女性から声をかけられたことがありました。

 真剣なまなざしで私を見つめる2人は、小学生の子どもを持つお母さんたちでした。

 クローゼ・ハンブルガー通りにあるこの墓地の入り口には、一つの碑が建っています。

 1942年、5500人のユダヤ人が、赤ちゃんからお年寄りまでここに集められ、アウシュビッツに送られたことが記されていました。

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(写真)(1) オットー・ヴァイトの作業所跡。ブラシを作る工房に、三十数人のユダヤ人を雇い、強制収容所移送から救った、盲目の工場主。もう一人のシンドラーと、言われています。小学生の息子と見学に訪れた、ノルミザ・ダ・シルバさん(47)は、「息子にユダヤ人の弾圧に反対した人もいたということを、知ってほしかった。こういう歴史を次の世代に伝えたい」と。

 「本当にひどい歴史ですから、私たちの親たちも、戦争中に何があったのか、なかなか話したがりませんでした。でも、過去をきちんと学ばないでは、未来を語ることもできませんものね」

 何気ない言葉に、改めて日本の現実を突き付けられた思いでした。

 日本はドイツと同盟を組んで第2次世界大戦をたたかい、侵略したアジアの国ぐにに、2000万人を超す多大な犠牲者を出すという惨事を引き起こしました。

 なのに、歴代政府のどの首相も、責任ある謝罪さえ行ってきませんでした。

 戦後50年もたった1995年になって、当時の村山首相が、談話で、戦前の日本の「植民地支配と侵略」を反省すると、やっと表明しましたが、その後も閣僚や、政府の要人などから侵略戦争を美化する発言や、靖国神社への参拝が相次いでいます。

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(写真)(2) 歩道に埋め込まれたプレート。ナチ政権下で犠牲になった人の名前、生年月日、移送された収容所名、死亡年月日が刻まれ、生前に暮らしていた家の前に埋められています。ナチ政権が抹殺しようとした人々の存在を、今日によみがえらせようという運動の一つです。

 こうした日本と、対極の立場に立ったのがドイツです。自国がおこなった過去の侵略戦争と、しっかり向き合い、1950、60年代ごろには、ナチスのやった蛮行に対する謝罪と補償をおこなう法的な基本レールがしかれました。

 そして世界大戦の歴史にかかわる節目ごとに、大統領や首相など、国の責任ある人が、ナチスが行った侵略戦争と、ユダヤ人に対するホロコースト(大量虐殺)などの犯罪行為を告発。ドイツの戦争責任を、しっかり次世代に引き継ぐ努力をしてきました。

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(写真)(3) 連合軍の空爆で破壊され、土台だけが残ったゲシュタポ本部跡は、ナチスの犯罪、それに対する抵抗運動などを展示する、野外の無料ミュージアムとなっています。

 ドイツ連邦基本法(憲法)は、「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、かつ保護することは、すべての国家権力の義務である」と、うたっています。

 子どもたちにも、自国の過ちをしっかり教え、平和と人権に貢献することの素晴らしさを知る人間になるよう、教育しています。

 もちろん教科書に、侵略戦争を美化するようなものは、ありません。

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(写真)(4) バラ通り(マリーエン地区)にある小さな公園には、ベルリンの女性彫刻家インゲボルク・フンツインガーのモニュメントが。ここでユダヤ人である夫の移送を、非ユダヤ人の妻たちが捨て身で立ち上がり、夫を取り戻したというたたかいがあったのです。

 このように、反省と謝罪を明確にすることで近隣諸国の信頼を獲得し、友好を確立してきたドイツ。

 ベルリン市内を歩くとあちこちで、自らの過去を告発し、再び悲惨な戦争を繰り返すまいという決意を語る記念碑や、モニュメントに、出会えます。

 なかでもユダヤ人の犠牲については、通勤客が乗り降りするSバーン(近郊電車)駅や、集合住宅の壁、多くの人が行き交う道路上など、日常の場が、生きた教育の場となっているのが、印象的でした。  

 文・写真 大内田わこ








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(写真)(5) Sバーングルネワルト駅のホームには、ここから移送された人々の記録が刻まれています。1941年10月から45年2月までに、186本の列車が、5万人余の人々を、絶滅の場所へと運びました。プラットホームの裏側には、ポーランドのアーティスト、カロル・ブロニャトフスキによる、祈念の碑があります。


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