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2013年7月4日(木)

薬のネット販売解禁 楽天会長が主導

対面販売原則の撤廃狙う

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 成長戦略と規制緩和の“シンボル”に―。政府は、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を原則、全面解禁する方針を決定しました。安全性の議論もなおざりなまま、関係者らの猛反発を押し切った安倍首相。背景にネット業界のしたたかな戦略があります。 (芦川章子)


 「風邪早く効く」。都内の薬局店内の棚には薬の箱がぎっちりと並んでいます。年内にもここにあるほぼすべての市販薬がネットで買えるようになります。

 副作用の危険もある薬の「対面販売」をやめるとどうなるのか。

安全策用意なし

 「薬の選択も、被害の結果も、すべては購入者の自己責任になります」と話すのは日本薬剤師会の藤原英憲常務理事です。同会は、ネット解禁を議論する国の検討会でも反対を貫き、推進派のネット業者らと論戦をくり広げてきました。

 「彼らは“大量に売れればいい”という考え。安全性についての話し合いは平行線で、11回も検討会を行ったが、確かな策はなんら用意されなかった。完全な“出来レース”」と憤慨します。

 厚生労働省は「これからルールづくりを目指す」というものの、限界を指摘する声も。

 違法な薬物販売や広告は現在、主に都道府県が監督していますが、東京都の担当者はわずか5人。野口俊久・都薬務課長は「ネット専任ではなく、他業務との兼任です。業者は無数におり、海外の業者も多い。解禁後はどこが監督するかは未定ですが、どれだけ対応できるか疑問です」といいます。

 ネット販売がすでに解禁されている海外では「ネットで販売されている薬の62%が偽造品」(「安全な薬品を入手するための欧州同盟」調査)という結果もあります。

公的医療も視野

 解禁を強固に訴えつづけたのは、ネット通販大手「楽天」です。楽天は、薬のネット販売大手「ケンコーコム」を傘下にもちます。同社は、ネット販売を一律に禁止した厚労省の省令は違憲として、裁判を起こしたこともあります。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は、政府の産業競争力会議のメンバーで、安倍首相にも近いといわれます。薬のネット解禁は「規制改革の象徴」として、同会議で執拗に主張してきました。

 一方で、市販薬の市場規模は約9400億円たらず。「成長戦略のシンボルにはなりえない」という声もあります。それにもかかわらずなぜ―。

 ネット解禁の動きを取材してきた『医薬経済』記者は「厳しい安全管理が問われ、もっとも規制が厳しいといわれる薬で規制を突破したという事実が大きい」といいます。

 薬にとどまらず「対面、書面原則の撤廃」を訴える三木谷氏。“ネットで買えないものはない”という下地づくりだとの見方が現場関係者に共通しています。対面販売の撤廃で、不動産などのネット販売も可能となります。

 さらに三木谷氏は、市場規模約6兆円の医療用医薬品への参入も明言。公的医療をも視野に、際限なき規制緩和を求めています。

 小泉純一郎首相のもと、あらゆる規制を撤廃し、市場にすべてをゆだねた「規制緩和」を想起させます。

 前出の藤原氏はいいます。「国民の命と健康を左右する大問題を、ネット業界の意見だけで決めていいのか。こんなやり方が民主主義といえるのか。今回手を貸した政治家の方々には、いずれ責任をとっていただきます」


 薬のネット販売解禁 医師の処方箋がなくても薬局で買える一般用医薬品は現在、副作用リスクの低い第3類のみネットで販売できます。今回の規制緩和で、薬剤師らの対面販売を原則とする第1類、第2類を含む約1万1400品目のほぼ全てがネット販売可能になります。第1類のうち、解熱鎮痛薬など25品目は一定期間除外、副作用を考慮し、販売方法などを検討することになります。

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