2013年6月12日(水)
パキスタン、米に正式抗議
無人機攻撃の停止を
【ニューデリー=安川崇】パキスタン領内の武装勢力を標的に米国が続けている無人機攻撃について、パキスタン政府が反発を強めています。8日には米国臨時代理大使を外務省に呼び、正式に抗議しました。巨額の資金援助元である米国との関係改善を掲げるシャリフ政権にとって、無人機への対応は対米政策の焦点の一つになります。
抗議の直接のきっかけは、シャリフ首相の就任後初めて米国が行った無人機攻撃。7日夜、北西部の北ワジリスタン地区で9人が死亡しました。
政府は8日、ホーグランド臨時代理大使に対し「パキスタンの主権侵害であり直ちに停止する必要がある」と抗議。「両国の友好と協力関係に否定的な影響を与える」(外務省声明)と強調しました。
2008年以降に急増した無人機攻撃に対し、パキスタン政府はこれまで表向きは抗議してきましたが、「米国との密約で黙認している」との指摘が絶えませんでした。
世論の反発は強く、シャリフ氏自身も大勝した5月の総選挙で「攻撃停止」を訴えました。首相に選出された直後の演説(5日)で同氏は「無人機の時代は終わらなければならない」と明言。一方で具体的な措置には言及していませんでした。
米オバマ政権は攻撃続行を明言しています。パキスタン総選挙直後の5月29日にも、反政府武装勢力パキスタン・タリバン運動(TTP)の「ナンバー2」を無人機で殺害しました。
これにTTPが反発。報道官は「パキスタン政府への報復」を宣言しました。シャリフ氏は「武装勢力との対話」を掲げますが、この攻撃が対話の実現に向けてのマイナス要因だとする見方が強い。ある国防関係者はロイター通信に、「ナンバー2の死は新政権の『対話』の見通しに影を差した」と語っています。
シャリフ政権が無人機問題に今後どう取り組むかはまだ明確ではありませんが、今回の抗議でより強い姿勢を示したといえます。主要英字紙ニューズは6日の社説で「解決は簡単ではないが、シャリフ氏への期待は高い。新政権が解決への道を開くことを望む」と述べています。