2013年5月31日(金)
きょうの潮流
「夢の原子炉」とうたわれた高速増殖炉「もんじゅ」の運転が禁止されました。約1万件もの機器の点検漏れが発覚。停止を命令した原子力規制委員会は「安全文化が劣化している」▼もんじゅの運転が始まったのは20年ほど前。しかし実際に発電していた期間は4カ月程度です。すぐに火災事故を起こし、14年半も運転中止。その後もトラブルが相次ぐなか、事業者の原子力機構は再開にむけて動いていました▼資源に乏しい日本で無限のエネルギーが手に入るといわれたもんじゅ。位置づけは原子力政策の根幹でした。国策によって1兆円近い巨額がつぎこまれ、動かなくても毎年200億円もの予算がつきました▼「夢」のまま実用化できず起こすのは事故ばかり。世界は技術的にも費用もきびしいと撤退しているのに、日本は高速増殖炉にこだわってきました。今回の停止命令にも機構側は「もんじゅの開発の意義は何ら変わるものはない」として、今後も開発にとりくむ意向を示しています▼しかし施設は老朽化し、開発当初からかかわった技術者もどんどん減っています。なによりも、安全にたいする意識が薄れ、その対策もおざなりでは廃炉の道しかないでしょう▼日本の原発の多くは活断層の上に建てられています。もんじゅも調査を開始します。「世界一安全」(安倍首相)と偽り、原発輸出に力を入れている場合でしょうか。地球を傷つけ、命を削る原発から、環境に優しく、人類と共存できる自然エネルギーに転換するときです。