「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年4月30日(火)

インド・スラム地区 火災で2000人住居失う

環境劣悪 苦しむ労働者

衛生・医療・賃金で疎外も

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 インドの首都郊外のスラム地区で今月、大規模な火災があり、少なくとも幼児2人が焼死、約2千人が住居を失いました。経済成長に伴い農村から都市への人口移動が続く同国。首都圏では、多くの労働者が劣悪な住環境で暮らしながら工場などで働いています。専門家は「スラム火災は都市計画の失敗の結果だ」と指摘します。(ニューデリー=安川崇 写真も)


写真

(写真)焼け焦げた自転車と、住民が暮らすテント=15日、ニューデリー郊外バワナ地区

地図

 ニューデリー郊外のバワナ地区を火災が襲ったのは今月12日。約500軒あった小屋の大半が焼けました。

 3日後の現地では、人々が自宅の焼け跡に、焦げた木材や布製のシートでテントを張り、床も壁もない状態で過ごしていました。

 土木作業員のムハンマド・フルカンさん(42)は火勢の強さに、身一つで逃げることしかできませんでした。

 「風が強く、次々に隣の小屋に燃え移った。10分で地区の大半が焼けた。5人の子どもの無事が確認できたのはずっと後だった」

 近接する工業団地の二輪車工場で働くリハナ・カトゥンさん(48)は「娘の結婚資金も、息子の学校道具も焼けてしまった。夫は病気で働けない。もう一度現金をためられるのか」と嘆きます。

 火災前から同地区には上下水道がなく、トイレは共同。住人は炊き出しと、政府が用意した給水タンクに頼って暮らしています。

 消防関係者は、燃えやすい構造の小屋が被害を広げたと語ります。焼け残った一角には、竹の骨組みにビニールシートやベニヤ板を張った小屋が壁同士を密着させて並んでいます。

 スラム支援に取り組むデリーのNGOハザーズ・センターは2010年の報告書で、「スラム建築の素材はウレタンマットや布、木材、樹脂材。着火すれば火の回りは非常にはやい」と指摘しています。

 こうしたスラムは、ニューデリー市街に約500〜800あるとみられています。デリー準州当局が10年に最高裁に提出した資料によると、約1500万人の人口の49%がスラムや不法占拠状態の小屋に住んでいるといいます。

 都市問題に詳しい別のNGO幹部サドレ・アラム氏は「ほとんどのスラムが数回の火災を経験しているはずだ」といいます。

 スラム住民の多くはウッタルプラデシュ州やパンジャブ州など周辺地域の農村からの移住者。タクシー運転手などの零細部門や、工業団地の工場などで働きます。バワナ地区の住民も大半が工業団地での労働で家計を支えています。

 記者が聞いた住民の月収は2500〜5000ルピー(1ルピー=約1・8円)。デリー準州の最低賃金(職種・学歴により7000〜9500ルピー)に大きく及びません。

 「彼らは貧しい、勤勉な労働者。インドの経済発展に底辺から貢献している」

 スラム住民のための人権訴訟を多く担当しているジャイシュリ・サトプテ弁護士はこう語ります。「にもかかわらず、衛生・医療・賃金などの基本的人権に関わる部分で社会から疎外されている」

 工業団地や住宅建設のための土地収用で居住地を追われた住民が、別の地域でスラムを形成するケースも多い。政府が代替土地の提供を約束した後も、数年にわたって放置されている場合もあります。

 前出のアラム氏は「準州政府は10年以上前に、都市貧困層の居住地整備計画を発表したが、実行していない」と指摘します。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって