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2013年4月10日(水)

日本国憲法 私の思い

出版の自由認めぬ戦前への回帰懸念

日本雑誌協会・編集倫理委員長

山 了吉さん

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写真

(写真) やま・りょうきち 1947年、福岡市生まれ。中央大学法学部卒業。70年に小学館入社。「週刊ポスト」「女性セブン」編集部を経て、2008年に取締役、11年に社長室顧問。

 日本雑誌協会の雑誌編集倫理綱領は、「言論・報道の自由」を雑誌編集者の基本的権利とし、憲法は尊重されなければならないと明記しています。

自民の改憲案

 自民党が2012年4月に出した「日本国憲法改正草案」は、05年の「新憲法草案」とは全く違う内容です。

 天皇を象徴から元首に、「自衛軍」を「国防軍」に変え、「国歌・国旗」や「緊急事態」の規定も付け加えています。

 驚いたのは、憲法13条の「個人」を「人」に置き換え、「公共の福祉」を「公益性及び公の秩序」に置き換えて、これを害するものは一切認めないといっている。集会、結社及び言論、出版などの自由を保障した21条の条文も、「公益及び公の秩序を害する」活動や報道は認めないと変えています。

 さらに、憲法97条の基本的人権の永久不可侵の規定を削除したことも大きな問題です。

 改憲草案の根本的間違いは、“国民があって国がある”のではなくて、“国があって国民がある”という、かつての「臣民思想」のようなものです。大日本帝国憲法と類似した、国家主義的な思想です。

 戦前、日本が大日本帝国憲法のもとで、国家が暴走し帝国主義的な侵略戦争に突き進み、国民を戦地に赴かして諸外国に筆舌に尽くしがたい害を及ぼしました。今の憲法はその反省の上に立ってつくられたものなのです。

横浜事件再び

 1947年に施行された日本国憲法と、48年に国連総会で採択された「世界人権宣言」は、人類史的にものすごく大きな価値があると思います。

 第2次世界大戦で人類がおかした大きな過ち、数千万人に及ぶ犠牲を払った反省が、世界人権宣言に盛り込まれたのです。すべて人は人種や肌の色、性、宗教などの違いを超えて一切が平等で人権は同じだという、崇高な内容です。

 世界人権宣言を先取りした形で、日本国憲法は、男女の平等、勤労の価値、教育を受ける権利、思想信条の自由などを明記しているのです。

 私たち出版人は、戦時中に治安維持法違反容疑のでっちあげ事件で雑誌『改造』や『中央公論』の編集者らが捕まり、特高警察の拷問などで5人が犠牲になった横浜事件を忘れません。遺族らが戦後、無実と名誉回復の訴訟を起こしましたが、法律がないからと免訴判決が下されました。

 憲法を変えれば、法の運用次第で横浜事件が再び起こりかねないとさえ懸念しています。

 (聞き手・岡部裕三 写真・栗山萌実)


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