2013年4月4日(木)
欧州中銀・IMFへの不信広がる
対キプロスで場当たり対応
銀行危機に陥ったキプロス救済のため100億ユーロ(約1兆2000億円)の支援策合意から1週間が経過し、同国では銀行窓口も再開しました。懸念されたパニックも起こらず、事態は救済策の実行に向けて動き始めたようです。しかし、救済策をめぐる国際金融機関の場当たり的対応に不信が広がっています。 (パリ=浅田信幸)
キプロス問題の経過を振り返ると、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)の対応に疑問を抱かせる事例は事欠きません。
銀行危機の最大の要因となったのは、昨年3月のギリシャ債務危機の打開策として実行された債務棒引きでした。これでキプロスは45億ユーロ、国内総生産(GDP)の4分の1に匹敵する債権を放棄させられました。この時点で銀行が危機に陥ることは当然、予測できたはずですが、なぜかユーロ圏では対策が取られていません。
救済融資を受けるためにキプロスが58億ユーロ(約7000億円)を預金課税で自己調達するという手法では、二つの問題が指摘できます。
破られる約束
一つは、昨年9月にECBのドラギ総裁が危機対応策として、「国債の無制限買い入れ」を表明しています。キプロス救済に必要な額は170億ユーロ。ギリシャへの2度にわたる支援総額2400億ユーロと比べれば、その7%でしかありません。しかし、GDPに匹敵するため返済不可能だと判断され、ECBの約束は反故(ほご)にされました。
もう一つは、当初の救済案にあった全預金口座を対象にした課税です。2008年の金融危機発生後に欧州連合(EU)では10万ユーロ(約1200万円)までの預金は全額を保護するルールが確立しています。ECBとIMFが出した救済案はこれをあっさりと反故にしたものでした。
ところが国民の間から噴出した怒りと反発、国際金融市場の反応を見て、すぐに同案を撤回。世論の反応を甘く見たとしかいえません。
最終的に合意された救済案では、10万ユーロ超の預金に負担を押しつける内容です。
「キプロスは例外」ということが喧伝(けんでん)されましたが、合意発表から数時間後には、ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長の口から「キプロスの例は今後の危機解決のモデルになる」との発言が飛び出し、金融市場が動揺。デイセルブルム氏はあわてて釈明に追われました。
課税への不満
ユーロ圏の危機管理について、経済協力開発機構(OECD)金融企業局のブランデルウィグナル副局長は、仏メディアのインタビューに「破滅的。これ以上に悪いものはないだろう」と答え、とりわけすべての預金を対象にした課税提案を非難。直後に修正されたにしても「すでに悪いことはなされてしまった」と語っています。
ユーロ圏への不満、不信はすでに昨年のギリシャ、今年のイタリアの総選挙でも明白に示されていました。キプロス問題を通じて、それが一段と深まったことは間違いありません。