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2013年3月27日(水)

100億ユーロ支援 合意したが

キプロス救済 なお困難

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 深刻な銀行危機と財政赤字に陥ったキプロスに100億ユーロ(約1兆2350億円)の支援を出す条件が25日に合意され、交渉当事者たちの間ではひとまず安堵(あんど)感が広がっています。しかし、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会のレーン経済・通貨担当委員は合意後、救援策が実行されても「キプロスの金融危機の深さは、同国にとっても国民にとってもこれからが困難だということを意味する」と楽観論を戒めました。 (パリ=浅田信幸)

返済不可能の額

 同国の銀行が危機に陥ったきっかけは、世界的な金融危機と連動して不動産・金融バブルがはじけたことと、真っ先に債務危機に陥ったギリシャの債権放棄を余儀なくされたためだといわれます。これで国内総生産(GDP)の4分の1に達する45億ユーロの債権が帳消しにされ、「ギリシャを助けることにはなったが、キプロスの銀行には打撃」(英BBC放送)となりました。

 キプロスの危機脱出には170億ユーロが必要と計算されました。しかし、GDPに匹敵する救済融資は返済不可能とされ、同国自体の努力による70億ユーロの自己調達がユーロ圏指導部の方針になりました。うち58億ユーロを同国の金融システムの整理・再編でまかなうという構想でした。

比重高いロシア

 キプロスは租税回避地(タックスヘイブン)としてロシアの大富豪などから膨大な預金を集めてきました。国際通貨基金(IMF)によるとローンを含めた同国の銀行の資産はGDPの8・5倍に達します。中でも預金総額の3分の1に上るロシアの比重の高いことが大きな特徴です。

 ロシアからの預金は資金洗浄(マネーロンダリング)の疑いが指摘されています。このため、EUの事実上の司令塔ともいえるドイツでは、キプロスの金融システムを現状のまま据え置いて銀行を助けることは、ロシアのマフィアへの援助にもなるという批判の声があります。仏紙ルモンドによると独社民党のガブリエル党首は「脱税の共犯に基づくビジネスモデルだ」と非難していました。

 銀行を“締め上げ”預金者にも銀行救済の負担を求める方針はこうした背景から決められたものです。キプロス第2の銀行の解体と高額預金者への大きな負担強制という救済融資の条件は、銀行の規模を縮小して金融システムを健全化するとともに、ロシアの比重も下げられるという一石二鳥が狙いです。

中小企業に打撃

 しかし、これまでのように預金が外国から集まらなくなるのは明らかで、輸出産業が乏しく観光と銀行業に支えられた同国にとっては相当厳しい選択です。10万ユーロ(約1230万円)超の高額預金者への負担強制は、必ずしも富裕層だけが対象とはいえず、中小企業が打撃を受けることも予想されます。銀行の整理・再編で人員整理も予告されています。

 キプロス議会財務委員会のパパドプロス委員長は英BBC放送の問いに、「われわれは深い不況と高失業に向かっている。彼ら(EUやIMF)は、キプロス経済は破壊されるべきだというメッセージを送りたくて、大部分それに成功した」と怒りを表明しました。


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