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2013年3月19日(火)

イラク戦争の10年

大義なき開戦の代償

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 米英両国軍は2003年3月、米東部時間19日午後10時(イラク時間20日午前4時)、イラクに対する軍事攻撃を開始しました。イラクの大量破壊兵器問題について、国連の査察による平和的解決の道が軌道に乗りつつあることに対し、力ずくでこの道を断ち切るものでした。軍事行動の「根拠」となる国連安保理決議もなく、国連憲章の平和のルールを踏みにじりました。(松本眞志)


■虚偽だった「根拠」

 イラク戦争を開始したブッシュ前米大統領が軍事侵攻の根拠としたのは、イラクのフセイン政権が「大量破壊兵器を保有している」ことと、「アルカイダの要員を含め、テロリストを援助し、かくまっている」という2点でした。

 しかし、この二つの根拠はその後、米国自身の調査で虚偽であったことが明らかにされました。

 戦争の「大義」が崩壊した後でも、ブッシュ前大統領は「イラクは『対テロ戦争』の最前線」とイラクに居座り続けました。

 開戦から5周年となる08年3月19日には、ブッシュ前大統領は、戦争が予想以上に長期にわたり、困難で戦費もかさんでいることを認めつつ、「フセイン氏を権力の座から引きずりおろしたのは正しい選択だった」と主張。新たな戦争目的を持ち出しながら、泥沼化した戦争を正当化しました。

■ 崩壊した有志連合

 国連憲章や国際法に根拠をもたない無法な先制攻撃だったイラク戦争。米国はこの戦争が国際的支持を得ていると認めさせるため、米国を支持する意思のある個々の国を集めて「有志連合」をつくりました。

 しかし、最大35カ国で国連加盟国の2割にも満たない数でした。北大西洋条約機構(NATO)の緊密な同盟国、フランスとドイツさえ参加しませんでした。参加した諸国も戦争の「大義」の崩壊、各地での戦況の悪化、米占領体制への抵抗の広がりなどを背景に、次々と撤兵を表明。各派兵国内で、イラク戦争に加担していることへの批判の高まりが圧力となりました。

 有力派兵国だったスペインでは、イラク開戦から1年後の04年3月の総選挙で「派兵部隊の撤退」を公約に掲げた社会労働党が劇的勝利を収めました。新首相に就任したサパテロ氏は派兵部隊の撤退に乗り出し、各国にも影響を与えました。

 「有志連合」には日本の自衛隊が参加。09年には、このうちイラクに派兵された航空自衛隊が米軍航空機材や武装米兵の空輸にあたっていたことが明らかになりました。武力行使をともなう多国籍軍への参加は、歴代日本政府が「憲法上許されない」と繰り返し述べてきたことであり、自衛隊派兵は憲法じゅうりんの歴史的暴挙でした。

■宗派間の争い拡大

 米軍侵攻で旧フセイン政権は崩壊。フセイン大統領自身も新政権下で処刑されました。米軍は9年近くにわたり、イラクの国土を占領しました。

 米軍占領下で連合国暫定当局(CPA)がつくられ、そのもとでイラク統治評議会がつくられました。統治評議会はこれまで抑圧されてきたイスラム教シーア派のメンバーが多数を占めました。米軍のシーア派やクルド人を優遇する「分断統治」で、イラクではイスラム教スンニ派優位の政治構造が崩れ、イスラム教スンニ派やシーア派、クルド人など宗派間や民族間の争いが発生、アルカイダなどによるテロも増大し、多くの国民が犠牲となりました。

 11年12月14日には、一部を除き、米軍がイラクから撤退。オバマ米大統領は「イラク戦争の終結」を宣言しました。

 米軍撤退後、選挙を通じた民主的政府の樹立による国づくりが待望されましたが、周辺国の介入などによるシーア派主導政権のもとでの新たな対立が、イラクを不安定な状況にしています。


イラク戦争の戦費と被害は

 米国のブラウン大学の研究者グループは14日、イラク戦争10年を控え、「イラク戦争のコスト」プロジェクトと題する戦争の影響や米政府の財政負担を分析した報告をまとめました。

 米政府支出について、戦費やイラク駐留費、退役軍人に支払う手当を含めて約2兆ドル(約190兆円)と試算。利子を含めると向こう40年で6兆ドル(約570兆円)に膨れ上がるとしています。

 人的被害について報告は、イラクの民間人犠牲者が13万4千人と推計、これにイラク軍、有志連合軍、武装民兵、ジャーナリスト、人道支援活動家などを加えた場合、17万6千から18万9千人にのぼるとしています。

 研究グループは、戦争の影響について、イスラム過激派を勢いづかせ、女性の権利も戦前よりも後退したなどと指摘しています。

表:イラク戦争をめぐる主なできごと

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