2013年2月15日(金)
きょうの潮流
世界最古の文明とされるメソポタミア。その遺跡から見つかった像には、2人のレスラーが組み合う様子が彫り上げられていました▼古代からつづき、近代オリンピックになっても第1回大会から登場したレスリング。その歴史はオリンピックと切り離せません▼最初は柔道から転身する選手が多かった日本も、1924年のパリ大会から参加。その後、学生を中心にひろがり、戦後は強豪の仲間入り。東京五輪では五つの金メダルを獲得し、近年は3連覇を達成した吉田沙保里、伊調馨(いちょうかおり)両選手のように女子の活躍が目立ちます▼これまで五輪でとったメダルは合計62個。それだけに除外競技の対象になったことは、レスリング関係者やJOCに衝撃をもたらしました。野球やソフトボールにつづき、世界トップの力をもつ競技がまたも消えてしまえば、応援する側も残念でしょう▼五輪の肥大化に歯止めをかけるため、IOCは競技を絞るようになりました。人気や普及度、男女の格差、スポンサーのつき具合など、多角的に分析。伝統スポーツといえども、そこにあぐらをかいていれば振り落とされる時代です▼現役選手の一人は「レスリングにとって五輪は唯一のモチベーション。それがなくなれば、何を目標にしていいかわからない」と嘆きました。たしかに五輪の宣伝効果は絶大です。しかし、日本のお家芸も世界を見渡せばどうか。スポーツの発展を五輪のメダルだけに頼っていいのか。足元を見つめる機会ととらえられないでしょうか。