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2013年2月13日(水)

自衛隊格闘訓練死 裁判が結審

暴行死の疑惑浮上

イラク派兵機に事故急増

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 当時20歳だった自衛隊員、島袋英吉(しまぶく・ひでよし)1等陸士が陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)で、徒手格闘訓練中に死亡した事件の真相と自衛隊の責任を問う国家賠償請求訴訟が1日、札幌地裁(石橋俊一裁判長)で結審しました。遺族による提訴(2010年8月3日)から2年半の審理で浮かび上がったのは―。 (山本眞直)


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(写真)20歳の若さで命を奪われた島袋英吉さんの「生きた証しがほしい」と自衛隊の責任と真相究明を求めて国家賠償請求訴訟をたたかう遺族=1日、札幌市

 「昨日の打ち合わせと違う。『覚えていない』という話だった」

 札幌地裁805号法廷。最初で最後の証人尋問が行われた1日の口頭弁論でのこと。被告側弁護人が、徒手格闘訓練で島袋さんを死亡させたA陸士長の証言にろうばいし、あわてて訂正させた場面です。

 事故は2006年11月21日、陸自北部方面隊第11旅団真駒内駐屯地の西体育館で起きました。第11後方支援連隊輸送隊(当時)に所属する沖縄出身で入隊間もない島袋さんは「スポーツは苦手で、音楽が好き」(遺族)。部隊では操縦手ながらラッパ手として活躍、自衛隊から表彰をされるほどでした。

損害賠償求める

 訴訟は、「英吉が死亡したのは徒手格闘訓練を命令した自衛隊の安全配慮義務違反と訓練関係者の注意義務違反が原因」として遺族が国(自衛隊)の責任の明確化と損害賠償を求めました。国(自衛隊)側は、「いずれにも違反していない」と請求の棄却を主張してきました。

 証人尋問ではA陸士長が「(島袋さんが)首をあげた状態で受け身はとれていなかったので投げ返し(投げ技の一部の)、背中から落下した」と証言しました。被告側代理人は「打ち合わせでの『覚えていない』が正しい記憶ではないか」と“誘導”、同陸士長は「はい」と訂正したのです。

 両親の提訴の最大の動機、事故直後から頭から離れなかった「自衛隊は何か隠している」という疑念。肋骨3本骨折、「手術すれば脳みそが飛び出す」と担当医から告げられ、遺族は「事故ではない、殺されたも同然だ」との思いでした。

 島袋さんらに徒手格闘訓練を命じたK輸送隊長(2佐)が事故直後、両親にした「訓練は床の上でしていた」との説明が、自衛隊事故調査報告書では「畳の上」と記述されるなど事故をめぐる自衛隊の数々の「隠ぺい」への怒りでした。

 原告側は準備書面、証人尋問で、調査報告書など被告側の主張と事実のくいちがいを丹念に積み上げ、事故死の真相に迫りました。

 証人尋問での被告側弁護人が見せた「誘導」は遺族と弁護団の追及に追い詰められた姿でした。

隊長も黙認した

 自衛隊の徒手格闘は素手による攻撃で「敵」に致命傷を与える「武器」です。島袋さんらの訓練では相手にどういう技を使うかを伝える「約束訓練」で、「投げ技」は含まれていませんでした。

 輸送隊のK隊長は、徒手格闘訓練のF教官(3曹)に「島袋1士は受け身ができていない」と伝え、受け身の訓練を指示したと陳述書で証言。原告弁護団は証人尋問で、F教官は受け身訓練をしなかったばかりか、A陸士長に「約束訓練」を逸脱する技かけ(投げ技)を促し、K隊長も黙認したことを明らかにしました。

 弁護団は、徒手格闘訓練で事故が多発していることを情報開示請求で取得した自衛隊資料で告発。同資料は、この訓練がイラク派兵をきっかけに強化されていること、その中で事故が急増していることを示していました。陸自北部方面隊はイラク派兵の第1陣です。

「国防軍」の動きにブレーキを

 佐藤博文原告弁護団長の話 島袋さんの死は頭部への強打だけの事故とは思えない。訓練を隠れみのに自衛官が彼に暴行を加え、それを自衛隊が組織ぐるみで隠ぺいしたのではないかという疑念が深まった。島袋さんの命を奪った真相を明らかにすることは、自衛隊を「国防軍」にし、米軍とともに海外で「戦争する自衛隊」に変えようという動きにブレーキをかけることにつながる。


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