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2013年1月22日(火)

日米同盟を強化・拡大

政府がASEAN外交方針

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 政府はこのほど、安倍晋三首相が18日にインドネシア・ジャカルタのシンクタンクで行う予定だったASEAN(東南アジア諸国連合)外交の方針を示した政策演説の全文を公表しました。

 演説は海洋の安定や秩序を前面に押し出し、日本が「世界最大の海洋勢力」である米国と同盟を結ぶのは「理の当然」と主張し、太平洋とインド洋で「いまこそ日米同盟にいっそうの力と、役割を与えなくてはなりません」と強調。インド、豪州との関係強化も主張しました。

 そのうえで、「海に安全と繁栄を頼る」日本にとってASEANとの関係は「最も重要な基軸であった」と主張。今後のASEAN外交の5原則として、(1)自由・民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着と拡大(2)法が支配する自由で開かれた海洋は公共財。米国のアジア重視を歓迎する(3)貿易や投資を促進し、日本経済の再生につなげる(4)アジアの多様な文化、伝統を守る(5)若い世代の交流で相互理解を促進する―を掲げました。

解説

アジアの信頼得られない

 「日米同盟は、かつてにも増して重要な意義を帯びてくる」―。安倍首相による外交政策演説(安倍ドクトリン)はこう強調しています。

 同演説は、東南アジア外交の原則をうたっているはずなのに、前面に出ているのは日米同盟です。「海は、力によってではなく、法とルールの支配するところでなくてはなりません」とする考えには、中国の台頭や軍事的進出を念頭において、日米とインド、オーストラリア、そして東南アジアを巻き込んだ“包囲網”を形成しようという意図が見えます。

 かつて1977年8月18日に福田赳夫首相(当時)がフィリピン・マニラで行った政策演説(福田ドクトリン)は「わが国は、諸国民の公正と信義に信頼してその安全と生存を保持しようという歴史上かつて例をみない理想を掲げ、軍事大国への道は選ばないことを決意した」と宣言したものでした。

 実際は福田政権時代も軍事費が右肩上がりに増えており、日米同盟強化が進んでいましたが、少なくとも侵略戦争の反省にたった日本国憲法にのっとって外交を進めるという発想を見て取ることができます。だからこそ、東南アジアでも受け入れられたのです。

 安倍首相の演説で「わたくしの国が、この『福田ドクトリン』を忠実に信奉し、今日まできた」と述べたのも、こうした評価を意識したためです。

 しかし、安倍首相は、「福田ドクトリン」が軍事大国化への道は歩まないと述べた肝心の部分には一切触れませんでした。それどころか、昨年12月の総選挙で「国防軍」創設と「集団的自衛権の行使を可能にする」と公約に掲げたのは安倍首相自身です。憲法9条改定も公然と掲げ、アジア・太平洋地域で「(米国と)パートナーをなすのが理の当然」と軍事的協力関係を探求しようという安倍首相にアジア太平洋地域からの信頼は広がらないでしょう。

 実際、オーストラリアのカー外相は日本軍「慰安婦」問題に関する1993年の河野洋平官房長官談話「見直し」問題について、「見直しが行われることは望ましくない」(岸田文雄外相との共同記者会見、13日)と述べるなど、安倍政権の動きに対する不信感がアジア・太平洋地域に広がっています。

 米国中心の軍事同盟(SEATO)が解消したもとで、ASEAN諸国は、域内を発展させることに力を尽くしてきた歴史があります。こうしたASEAN諸国でつくられている平和と安全保障の仕組みを貫いているのは、軍事的手段、軍事的抑止力に依存した安全保障という考え方から脱却し、地域のすべての国を迎え入れ、対話と信頼醸成、紛争の平和的解決など、平和的なアプローチで安全保障を追求するという“平和的安全保障”という考え方です。

 日米同盟堅持・拡大を宣言した安倍ドクトリンほど、ASEAN諸国で発展する平和外交の流れに逆行するものはありません。(山田英明)


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