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2013年1月20日(日)

B787事故

米頼み、独自検査なし

国交省、安全対策に“後手”

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 一歩間違えれば大惨事につながった、米ボーイング社787型機(全日空)の高松空港への緊急着陸事故。事故をめぐり、安全最優先の航空行政の確立が求められていますが、日本政府の対応には米政府の“後追い”との批判の声が上がっています。(細川豊史)


導入のため規制緩和も

 同事故では、エンジンの始動や操縦系統を動かすのに不可欠なリチウムイオンバッテリーが黒く変色し、発煙していました。

 国土交通省は17日、保有する日本航空と全日空に、同バッテリーの安全性が確認されるまでの同型機の運航停止を命令しています。

遅れきわだつ

 しかし、同省の対応の遅れはきわだちました。両社は事故発生の16日に自主的に運航中止を決定し、米連邦航空局(FAA)も同日、米航空会社に運航停止を命令。国交省の命令はそのあとでした。

 国交省の報道発表は、FAAの命令にふれて「これを受け、国土交通省としても」停止命令を出すというもの。“受け身”の姿勢といわざるをえません。

 エンジンを2機しか積まない航空機は、トラブル時に緊急着陸するまで片方のエンジンだけで飛行してよい時間は1時間まで(長距離進出運航=ETOPS)とされていましたが、B787型機は「エンジンの信頼性が向上した」として、3時間とされています。

 それだけ陸地から離れた洋上を飛べるようになりましたが、リスクは高まります。パイロットの長澤利一さん(日航整理解雇撤回裁判原告)は、「海の真ん中で火災が起きれば、エンジンが無事でも深刻な事態に陥ります。その危険性も踏まえ、FAAより先に国交省は運航停止させるべきでした」と話します。

書類検査のみ

 背景には、国交省の航空機の安全審査に責任を持つ姿勢の弱さがあります。

 航空法で、航空機を飛行させるためには設計、製造、完成後の現状の3段階にわたる証明検査を受けることが必要です。

 しかし、輸出国ですでに検査済みの輸入航空機は、書類検査のみ。「検査基準は日本とアメリカではほぼ同じ」(同省航空局)です。

 長澤さんは、「航空局は、日本独自の検査機関としての姿勢が弱いのでは」と指摘します。

「合理化」推進

 同省は、航空会社と一体になってB787型機の導入を推進し、そのための規制緩和も行っています。

 同省の「航空安全基準アップデイトプログラム」では、「わが国航空会社が世界に先駆けて導入するB787型機のメリットを早期に発揮させるため、安全確保を前提に、導入当初から円滑な機材運用を可能とする」と強調。

 (1)同型機に乗務する機長の試験・審査の省略(2)ETOPSの承認に必要な運航・整備経験期間の大幅短縮(3)飛行間点検(到着・出発間の点検)の省略―などを行っています。

 規制緩和をテコに航空会社は整備士削減などの「合理化」を推進。航空労働者からはこうした動きに批判の声が上がっています。

 長澤さんは語ります。

 「空の安全を守るため、国交省は私たち現場労働者の声を聞き、行政に反映させるべきではないでしょうか」


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