2013年1月13日(日)
印パ境界
銃撃戦相次ぎ緊張
両国政府は和平過程重視
【ニューデリー=安川崇】インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で、実効支配線(停戦ライン)をまたいでの両軍の銃撃戦が相次ぎ、緊張が続いています。ただし両国政府とも、2011年に再開した和平交渉への影響は限定的なものにとどめたいとの姿勢を示しています。
最初の衝突は6日に発生。銃撃戦でパキスタン兵士1人が死亡しました。さらに8日、インド兵2人が死亡、10日にもパキスタン兵1人が死亡しました。
双方が相手側を、停戦ラインを越えて攻撃したなどと非難し合っており、正確な事実関係は不明です。
停戦ライン付近での散発的な銃撃戦はしばしば発生していますが、続けて死者が出る事態は、近年ではまれです。
両国は同地方の領有権などをめぐって過去に3回、戦火を交えており、今も停戦ライン付近では数万人規模の部隊が対峙(たいじ)します。
和平の努力は続いてきましたが、08年のインド西部ムンバイでの同時テロ事件を機にいったん中断。しかし11年になって再開し、最近は両国のクリケット交流戦が5年ぶりにインドで開かれるなど、関係改善ムードが続いています。
今回の事態を受け、両国では野党などから相手側への厳しい対応を求める声が出ています。
しかしパキスタンのカル外相は10日、首都イスラマバードでの記者会見で「政府と国民はインドとの関係正常化と信頼醸成に努力を注いできた。この過程を後退させることは望まない」と発言しました。
インドのクルシド外相も9日、「事態をエスカレートさせてはならない。これまでの努力を無にしようとする勢力には注意する必要がある」と語り、和平プロセスを擁護する姿勢を示しています。