2012年12月21日(金)
ポリオ接種狙われる
「西洋の陰謀」説 医療関係6人殺害
パキスタン
【ニューデリー=安川崇】パキスタン南部カラチと北部ペシャワルで最近、国連の援助を受けて子どもへのポリオワクチン接種に従事していた男女6人が相次いで殺害されました。犯行声明などは出ていませんが、以前から一部の保守的イスラム指導者や反政府武装勢力がワクチン接種を「西洋の陰謀」だとして非難しています。国連は懸念を表明しています。
現地からの報道によるとカラチで18日、接種計画に参加していた女性4人が射殺されました。前日には同地で男性職員1人が殺害され、ペシャワルでは18日、ボランティアとして参加していた10代の女性が射殺されました。
当局は接種を一時停止したと語りました。
パキスタンはアフガニスタン、ナイジェリアとともにポリオの流行地とされます。特にアフガン国境に近い部族地域で患者が多い。政府と国連は接種計画を進めていますが、タリバンと政府軍との戦闘や洪水被害などの影響で難航しています。
一部のイスラム指導者は、接種計画を「イスラム教徒を不妊にする西洋の陰謀」「米国によるスパイ活動」などと非難しているといいます。米国は実際に偽のワクチン接種計画を通じてウサマ・ビンラディン容疑者のDNAサンプルを採取しようとしていたことがわかっており、この主張に信ぴょう性を与えているとの指摘があります。
今年6月には部族地域に拠点を置くタリバン指導者が「米国が無人機攻撃を停止するまで接種を禁止する」と発表しました。
今回の事態を受け、国連と世界保健機関(WHO)は声明でパキスタン政府に対し「接種従事者の安全を守るよう全力を挙げる」ことを要請。一方で「ポリオの一掃に向けたパキスタン市民と政府の努力を支持し続ける」とも述べ、接種計画は継続する姿勢を示しています。
ポリオ 頭痛、発熱などの初期症状を経て手足のまひを引き起こすウイルス感染症。発症は5歳以下の児童が大多数です。効果的な治療法が未確立の一方、ワクチン接種による予防が有効です。