2012年11月27日(火)
米国の「不法移民」“市民権の夢実るか”
大統領選敗北 共和党の反対姿勢が軟化
【ワシントン=小林俊哉】1120万人に上るとみられる「不法移民」問題は米国政治の大きな課題です。その滞在資格をどうするかは、大統領選でも論争となりましたが、選挙後、野党・共和党の姿勢に変化の予兆が出ています。
共和党は選挙中、メキシコとの国境に通電したフェンスを設けるべきだと主張するなど、厳しい姿勢を強調。同党のロムニー候補は、不法移民に対し“言われるまでもなく、自ら本国に帰れ”と主張していました。
同党は大統領選でヒスパニック(中南米系)票を大幅に失いました。米メディアが実施した出口調査では、ヒスパニック系の71%がオバマ氏に投票。ブッシュ前大統領はヒスパニック票の4割を集めていたことから、同党には支持基盤の将来の先細りの懸念さえ出始めました。
ベイナー下院議長(共和)は選挙後早速、「包括的な解決が長らく待たれている。大統領と私や他の関係者の間で、合意できることがあると確信している」(8日)と表明。歩み寄る姿勢をみせました。
一口に「不法移民」といっても、両親等に連れられて米国に移住した若い世代は、自身に落ち度はなく、「強制退去」させられても、「本国」には何のつながりもない人たちが多数です。議会では2001年以来、民主・共和両党の有力議員が共同し、略称「ドリーム(夢)」と呼ばれる法案を提出。09年法案では、若い不法移民に6年間の滞在許可を与え、この間に所定の基準を満たせば、市民権獲得に道を開くとしていました。
しかし、共和党内では、不法移民の流入で米国民の雇用が阻害されるなどとして、移民への厳しい姿勢に共鳴するグループが台頭し、与野党合意は困難に。それでも選挙後は、「われわれには幅広い支持層が必要だ。われわれは人口構成の変化に対応できない」(マケイン上院議員、25日)と、増加する移民系有権者の要望に見合う政策を掲げるべきだとの主張が強まり始めています。
オバマ大統領は14日、「移民改革が実現できると自信を持っている」と述べました。「ドリーム」法案を求める市民グループらは、この機運を盛り上げていく必要性を強調しています。