2012年11月11日(日)
貧困層支援に銀行課税強化
政権が法案を提出
大統領「利益を社会に“還元”」
エクアドル
南米エクアドルのコレア政権は、貧困層支援の拡大をめざし、巨額の利益を上げている民間銀行への課税強化をはかる法案を国会に提出しました。業界は強く反発していますが、国会審議では、野党議員からも賛成意見が続出しており、法案は賛成多数で可決される見通しです。
現地メディアの報道によると、エクアドルでは、貧困層の約190万人が生活・起業支援のための給付金「人間開発手当(BDH)」として月額35ドル(1ドル=約80円)を受け取っています。
コレア政権は、これを50ドルに引き上げるためには約3億ドルの追加予算が必要と試算。政府が提出した社会的費用再配分法案は、追加予算の54%(約1億6400万ドル)を銀行への課税強化(海外資産への課税、免税措置の廃止など)でまかなうとしています。
エクアドルの民間銀行は1999年に発生した金融危機で破たんに直面し、国から約80億ドルの救済資金が提供された経過があります。コレア大統領は7日のテレビ番組で、99年当時は、銀行の「損失が社会化された」のであり、今回の法案によって、再建された銀行の利益が初めて社会化され、社会に“還元される”と説明しました。
民間銀行協会のセサル・ロバリノ専務理事は、今年の銀行業界の利益(見通し)は約3億ドルにすぎず、政府の提案している負担額は余りに大きいと指摘。「これではほとんど接収ではないか」と批判しています。
8日に始まった法案審議では、BDHそのものについて、根本的な生活向上につながらない“非生産的施し”だとする反対論も展開されました。これにたいし、与党国家同盟(PAIS)の議員団は、BDHを元手に資金をため、養鶏を始めた女性の事例などを紹介し、「BDHは贈り物でも施しでもない、必要とする人々への支援なのだ」と強調しました。
発言した野党議員の多くは、BDHについて来年予定されている大統領選向けの「キャンペーンの道具として利用されるべきではない」などと注文をつけながらも、今回の法案には賛成の態度を表明しました。
エクアドルの国会(1院制124議席)では、与党勢力だけでは過半数に達しません。しかし、一部野党に賛同が広がっていることから、法案は今月中にも可決、成立するとみられています。
エクアドル スペイン領からグランコロンビア(コロンビア・ベネズエラとともに構成)を経て、1830年に分離・独立。面積は約27万平方キロで日本の約3分の2。人口は1466万人でキリスト教カトリックが9割を占めます。2006年の大統領選挙で貧困対策などを重視するコレア元経済・財政相が勝利し、09年に再選。