2012年10月22日(月)
きょうの潮流
バラにとげあり、とよくいいます。花は美しいけれど、茎にとげがあるように、美しいものは、恐ろしい一面があるという例えなどに使われているようです▼チョウに毒あり、と、美しいチョウの羽に猛毒が見つかったという研究が先週発表されました。あでやかなチョウの写真も合わせて掲載されました。毒の作用は人を死亡させるほどのものだとありました▼毒が見つかったのは、羽の先がオレンジ色をした、ツマベニチョウという名前のチョウ。モンシロチョウと同じ仲間ですが、大きさがアゲハチョウほどもあります。日本では沖縄や九州南部で見られ、南国を代表するチョウです▼沖縄でこのチョウに出合ったことがあります。山に近い森林の上空をすばやく飛ぶさまは力強く、花に止まった時に見たオレンジ色は目に染み込むように鮮やかでした▼毒を見つけた研究者によると、鳥などの天敵から身を守るためではないかといいます。生きものの世界で毒は珍しくありません。チョウの仲間には、そのものずばり、「ドクチョウ」と呼ばれるグループもあります。鳥などの嫌いな成分が体内にあるので、そんな名前がついているそうです。毒を持たないチョウが、ドクチョウの色などを真(ま)似(ね)たりするといいます▼今回見つかった毒の成分は、海にすむ巻貝の一種だけにあるものと同じでした。毒から新しく見えてくる生きものの営みがありそうです。さて、「チョウに毒あり」も慣用句として、人の口の端に上る日が来るでしょうか。