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2012年10月8日(月)

日常の中 ふらっとデモに

展覧会で「反原発」

アーティスト アキラ・ザ・ハスラーさん

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 毎週金曜日の官邸前で参加者を誘導するスタッフの中にアーティストのアキラ・ザ・ハスラーさん(43)の姿があります。Tシャツの胸には「NO NUKES(原子力に反対)」とプリント。現在、東京都内で展覧会「ふつうにくらす」を開いています。(舘野裕子)


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(写真)アーティスト アキラ・ザ・ハスラーさん

痛みも悲しみも受け止めながら■それぞれの人がそれぞれの場所で

 会場に入ると、白い壁に浮かび上がる文字があります。

 ぼくは料理をする。セックスをする。ジムに行く。粘土をいじる。原発反対のデモに行く。悲しいことはいつもある。ぼくはあなたのことを考える。

 「買い物帰りにふらっとデモに寄ったり、そういうふつうの暮らしがあっていいと思ったんです。デモに行くと、子どもを抱いた若いお父さんとお母さんやパンクロッカーもいれば、僕のようにゲイ(男性同性愛者)もいる。それぞれが日常のいとなみの中から何万人の中の一人として参加しています」

 会場フロアには、石粉粘土で作った人形がたたずんでいます。赤ん坊を抱く父親、老婦人、愛し合う恋人たち、スケートボードに乗る男の子。人形たちが描く日常の風景の中に、メガホンを持つ女の子や「NO NUKES」のプラカードを持つ男の子の姿もあります。

アンチテーゼ

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(写真)アキラ・ザ・ハスラー「赤い糸」(2011年)copyrightofAkiratheHustler

 日常の「NO NUKES」を描く一方、波風を立てず「ふつうでいなきゃいけない」ことに対するアンチテーゼでもあるといいます。「これはおかしいなと思ったら、『おれたちはここにいるよ』と表明しないことには、何も始まらない。人任せにはできないから」。性的マイノリティーやHIV啓発活動に携わるなかで実感してきたことです。

 以前、妹から「東京の人たちの電気のために福島は犠牲になったのに、なぜ無神経にデモなんかできるのか」と問い詰められたことがありました。「被災地に寄り添う」とはどういうことなのかを考えてきました。

 この展覧会のために用意した水彩画は、日本列島の地図の上に横たわる人の絵を描きました。日本列島をベッドにたとえると、横たわった人の心臓のあたりに福島県があたります。横には「PAIN(痛み)」の文字が添えられています。

 「原発事故で傷を負ったのは僕たち全員なのではないか。一人ひとりが胸に大きな傷を抱えています。被災地の気持ちになったつもりでいるだけでは欺瞞(ぎまん)になってしまうのではないか。それぞれの人がそれぞれの生きる場所で感じるリアリティーに突き動かされて動けばいいと思うのです」

「大丈夫だよ」

 向かいの壁には、「NOT ALONE,DON'T WORRY」と書かれた絵も。傷を負ったすべての人たちに「大丈夫だよ」と優しくかける声が聞こえてくるかのようです。同時に、誰一人として原発と無関係の人はいない、嫌でもつながっているという現実をも突きつけます。

 「僕たちはもうすでに原発と放射能と共に『生きてしまっている』という日常を受け止めなければいけない。これまでだってずっと痛みも悲しみもあったはずなのに、見ないようにやりすごしてきてしまった」と、アキラさん。

 人形の手には、それぞれ赤い糸が結ばれています。「決して軽くない現実をいま受け止めて僕たちは暮らしを続けていこうとしています。でもそこで人と人とが関係を結び、つながっていく美しさもあるのです」

◆◇◆

 展覧会はオオタファインアーツで13日まで。月曜日は休廊。入場無料。電話03(6447)1123


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