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2012年10月3日(水)

訪問介護 短縮30分が9割

生活援助 時間削減の実態

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 介護保険で訪問介護の生活援助(調理・掃除など)の基準時間が4月から削減されたことにより、従来90分程度の援助を受けていた高齢者のうち、「60〜70分」程度の区分に切り下げられた人が9割にのぼることが、2日までに明らかになりました。日本共産党の紙智子参院議員が調査を求めていたのに対し、厚生労働省が東京の大手事業所の利用者2853人の事例を示しました。(4月時点、

 これまで、生活援助は「60分程度」と「90分程度」の2区分でした。ところが、4月からの介護報酬改定に伴い、それぞれ「20〜45分程度」、「60〜70分程度」に短縮されました。

 厚労省は時間短縮について「国民の苦情、声がたくさん届いている」と認め、45分の援助を2回使って90分にするなど「複数回の訪問により対応することも可能」(「介護報酬改定に関するQ&A」)と弁明してきました。

 しかし今回の調査で、従来90分の援助が31%を占めていたのに対し、4月には「45分2回」の援助は3%しか提供されていないことがわかりました。また、従来60分に区分されていた人のうち、20〜45分に減らされた人が18・5%いました。

 45分の援助2回で90分利用するには、2時間以上あけての訪問としなければならないうえ、従来と比べ利用料が大幅に上がります。

 紙氏は7月30日の参院社会保障・税特別委員会で、援助時間の削減や利用料アップのために「会話ができなくなった」「おかずを減らした」などの悲鳴が上がっていると批判し、「厚労省として実態を調査すべきだ」と追及。小宮山洋子前厚労相が「調べたい」と答えていました。

全国の実情調査を

 厚生労働省は生活援助削減への国民的批判を受けて、「これまで提供されてきたサービスを利用者の意向等を踏まえずに、新たな時間区分に適合させることを強いるものであってはならず…」とする「Q&A」(3月16日)を公表しました。

 しかし今回の同省自身の調査では、従来90分の援助を受けていた高齢者のうち、「45分2回」の援助を受けることになった人は一握りで、大多数が「60〜70分」の区分に切り下げられています。

 他方、90分の区分から「60〜70分」の区分に移された人について、同省は「90分程度のサービスを…継続して提供することは可能」(Q&A)と説明しています。これ自体は国民の運動に押された対応です。

 しかし事業所に支払われる「60〜70分」の介護報酬は、従来の90分の報酬より2割も減ります。90分の援助の継続は事業所の赤字になるため、ほとんど姿を消しているのが実情です。

 愛知県社会保障推進協議会による同県内の事業所調査では、生活援助利用者の48%が4月から介護プランを変更されました。90分から60分に援助を短縮された人は生活援助利用者全体の21%。60分から45分未満に短縮された人は25%にのぼります。60分から45分への短縮が厚労省の調査結果より多くなっています。

 生活援助の時間短縮が進む中で、ホームヘルパーは時間に追われ、▽調理ができなくなりコンビニ弁当に代えた▽洗濯物を干せず利用者が干して転んだ▽利用者と会話できず状態の変化を把握できない―など、生存権の侵害ともいえる事態が広がっています。

 ヘルパーは短縮された時間の中で仕事が終わらず、サービス残業を強いられています。

 日本共産党は一貫して、生活援助の時間短縮の中止・撤回を求めてきました。

 今回の厚労省調査は生活援助削減の一端を示しましたが、1事業所のデータにすぎません。「60〜70分」に区分された利用者が実際にどの程度の援助を提供されているかも不明です。全国的な実情を調査し、時間短縮を再検討・撤回すべきです。(杉本恒如)

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