「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年9月24日(月)

ゆうPRESS

いいかげんでもいいんだよ

こわれ者の祭典10周年

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

うつ 摂食障害 リストカット…「生きづらい 病気の自分もそう悪くない」仲間に出会ってそう思えた

写真

(写真)10周年を迎えた「こわれ者の祭典」でパフォーマンスをする月乃光司さん

 「病気だよ!全員集合ー!」のかけ声で幕を開けるステージ。うつ病、統合失調症、アルコール依存症、摂食障害、脳性まひなどの病気や障害を抱える人たちが、自身の体験や「生きづらさ」を自作詩などで表現し、交流する「こわれ者の祭典」が10周年を迎え、新潟、東京で開催されました。ユーモアを交えて弱くてみっともない自分もさらけ出し、ありのままを肯定して「生きるヒント」を分かちあう出演者の姿に、会場は涙と笑いに包まれました。

 同祭典代表の月乃光司さんはパジャマ姿で自作の詩を絶叫しながら朗読します。パジャマは、引きこもり生活を送っていた20代当時に着ていたものです。15歳の時に容姿コンプレックスから醜形恐怖症になり不登校に。自殺未遂やアルコール依存症で入退院を繰り返しました。「病気の自分を認められず、世界で一番自分が嫌いだった。今でも生きづらさがなくなったわけではありません。でも今は、病気の自分もそう悪くないなと思っています。自分の生き恥をさらけ出すことが生きる力になっていった」

 ほかのメンバーもそれぞれ「どん底だった時」について語ります。「自分が生きていることで人に迷惑をかけていると思っていた。唯一、人のためにできることは死ぬことだと思い、リストカット(自傷行為)を繰り返した」「運動も勉強もできなくていじめられ、母親には『おまえはなぜできないんだ。恥だ』と見放された。自己評価が低く、うつ病や社会恐怖症になった」

 暗闇から抜け出したきっかけを、月乃さんは「自分と同じように生きづらさを持った仲間たちとの出会いだった」と。アルコール依存症患者の自助グループに初めて参加したとき、「病気の自分のぶざまな姿も笑い飛ばす『変な人』が勢ぞろいでびっくりした」。それまでは親に「ちゃんとしなさい」と言われ、自分も「ちゃんと生きなきゃ」と思ってきました。「でも、そこでは『おかしくてもいいんだよ』『いいかげんに生きよう』と言ってくれる仲間がいた。自分の中のくだらない価値観を壊してくれ、楽になれた」

 月乃さんがつくった祭典での「諸注意」には、その心が込められています。「ちゃんとやろうとか、まじめにやろうとすると、どんどん生きづらくなっていきます。本日、出演者・スタッフ一同、精いっぱい心を込めて手を抜きます! お客さまもできるだけ適当に見ていただけますと幸いです」


生きやすさにつなげていく

月乃さんの話

 「参加者の半数以上が当事者です。10年たちましたが生きづらさを抱える人がたくさんいると感じています。祭典で出会った時には元気のなかった人でも、数年を経て良い表情に変化していくのを見るとうれしくなります。一人だけで苦しんでいる人がここで知り合い、つながり、『生きやすさ』へとつなげていく祭典として、細く長く続けていきたい」

 月乃さんが10年間朗読し続けてきた詩「仲間」の一部を紹介します。

仲 間

 一人ぼっちでずっと生きてきた。生きることができない。死ぬこともできない。人が怖い。だけど孤独に苦しんでいる。それが僕だった。僕と同じ心を持つ人たちがどこかにいることに気づいた。僕と同じ心の痛みを持つ人たちがどこかにいることに気づいた。

 僕と同じにおいを感じる人たち、それは僕の仲間だ。僕と同じ生きづらさを持つ人たち、それは僕の仲間だ。

 流れる赤い血、手首をカッターナイフで傷つけた少女、僕の仲間だ。一人ぼっちの部屋、見つめるのはインターネットだけの少年、僕の仲間だ。精神科病棟、外来の待ち時間に孤独を見つめる人たち、僕の仲間だ。日本全国200万人のアルコール依存症のみなさま、僕の仲間だ。仲間、仲間、仲間、仲間、仲間。仲間がいれば僕はきっと生きていける。

 仲間で傷をなめ合って、傷口をほじくり回して、傷口を突つきあって、流血して大流血。血と汗と涙を流しながら生きていこう。


ゆっくり進んでいきたい

写真

 強迫行為に苦しんだ成宮アイコさん 仲間から「この10年間で一番変わった」といわれるのは成宮アイコさんです。舞台に立つようになったのは2003年。「全員に下を向いてもらったり、机の上にぬいぐるみを置いて、私は端っこで朗読したりしていました」。いまではピアノとバイオリンの調べにあわせ、自らの体験をもとに作った詩を、舞台中央で叫びます。

 物心ついたときから強迫行為に悩まされ、「他人と比べて自分はダメな人間だと思っていました」と成宮さん。同祭典に参加し、パジャマ姿で体験を赤裸々に語る、月乃さんに出会い、「なんて格好悪いのだろう。この人には話せるかも」と交流が始まりました。

 「祭典にかかわって、リアルな生身の人間にたくさん出会うことができました。これからもゆっくりと進んでいきたい」

写真

(写真)脳性まひのDAIGOさん(右)と周佐則雄さんがコンビを組む脳性マヒブラザーズ。掛け合いのお笑いを披露すると、会場は笑いの渦に。10周年を機に祭典を卒業。お笑い界デビューをめざします

写真

(写真)28歳で、そううつ病、摂食障害、パニック障害と診断されたKaccoさん。「自分が生きていることで家族に迷惑をかけていると思っていたときが一番しんどかった。イラストに出会うことで救われた」と体験をつづった詩を披露


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって