2012年9月11日(火)
きょうの潮流
この夏、ロンドンにともり続けた聖火が静かに消えました。スポーツを通して、世界がひとつになったオリンピックとパラリンピック。心ときめかせたプレーの数々、あの笑顔や涙がまだ鮮明によみがえります▼発祥の地の大会は盛り上がりました。パラリンピックでは、障害者スポーツを競技として楽しみ、他国の選手も惜しみなくたたえる。大観衆の温かい拍手のなか、男子走り高跳びで自身最高の4位に入った鈴木徹選手は「気持ちよく跳べて楽しかった」▼成熟した大会は選手の力を引き出します。日本の選手団も五輪では史上最多となる38個のメダル、パラリンピックでも前回と並ぶ金メダル5個をつかみとる奮闘ぶりでした▼とはいえ、課題もはっきりとみえます。低迷した競技は指導や強化方法が根本から問われ、国の支援が届かない競技は落ち込んだまま。メダルの総数では大きく減らしたパラリンピックも、世界との差のひろがりを口にする選手は多い▼「人間の可能性の極限を追求する有意義な営み」(スポーツ基本法)として位置づけられているトップスポーツ。選手たちの躍動する姿は、国民に夢と感動をあたえ、社会全体に活力をもたらします▼その価値を守り、発展させていくことは国の責務でしょう。パラリンピックで忘れられない場面がありました。競泳でメダルをとった日本とスペインの選手が車いすにのり、手をつないで表彰台を後にする―。あらゆる壁をのりこえていく、そこにもスポーツの魅力があります。