2012年8月29日(水)
きょうの潮流
「人間は、本来ごうまんにつくられており、高い地位につくと必然のように専制に向かってゆく」。18世紀フランス大革命期の指導者の一人、バルレーという人が残した言葉です▼人民の人権を保障するとともに、専制に向かいがちな権力の乱用を防ぐ。君主が権力をほしいままにして人の権利を押しつぶしてきた過去を顧み、後戻りしないよう自戒し、近代の民主政治は始まりました▼国民の代表が集まる議会は、民主政治のかなめです。三権分立など、乱用を防ぐしくみが編み出されました。しかし、新たな専制や独裁への誘惑はたえません。議会を利用して独裁をめざす者も現れます▼「われわれは、議会という民主主義の兵器廠(しょう)の中に入り込み、われわれを民主主義そのものの兵器で武装するのだ」。ドイツ・ナチ党の宣伝局長ゲッベルスの言葉です。ナチ党は、国民の不満を巧みにとりこみ、選挙で勝って独裁へまっしぐら。民主主義を、民主主義自身の助けを借りて「まひさせる」(ゲッベルス)▼さて、いまの日本。国会は、法律をつくったり権力を監視し乱用を防いだりする役目をもち、首相を選び、憲法の改正も提案できる「国権の最高機関」です。議員の数をばっさり減らせば、「最高機関」の独自の力をそぎ落とします▼国政への進出をめざし、衆院の定数を半分に削るという大阪維新の会。代表の橋下大阪市長はいいます。「強制的に物事が決まるルールをつくらないと…」。バルレーやゲッベルスの言葉を思い起こします。