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2012年8月14日(火)

エジプト大統領

軍権限強化の「憲法宣言」廃止

国防相らを解任

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 【カイロ=小泉大介】エジプトのモルシ大統領は12日、軍最高評議会が6月に公布した暫定憲法に相当する「憲法宣言」を廃止するとともに、同評議会議長のタンタウィ国防相とナンバー2のエナン参謀総長を解任しました。昨年2月のムバラク大統領退陣後も続く軍の政治支配終えんと民主化の前進につながるか、国際的にも注目されます。


 モルシ大統領は同日、「憲法宣言」を廃止したうえで、解散命令が下されている人民議会(国会)が再選出されるまで行政と立法の権限を大統領に集中する新たな憲法宣言を公布しました。

 廃止された「憲法宣言」は、同大統領の就任前に決定されたもの。軍最高評議会が宣戦布告の権限を含め軍に関する全権を握るとともに、人民議会再選出まで立法権や予算決定権を保持するなど軍の権限強化をはかるものでした。

 一方、大統領は解任したタンタウィ国防相とエナン参謀総長を大統領顧問に指名し、後任にはそれぞれアッシーシ陸軍元帥とソブヒ中将を充てました。また副大統領に判事出身のメッキ氏を新たに任命しました。

 モルシ大統領は12日、決定を行った後の演説で、「私は特定の個人を非難したり軍を侮辱することを意図したのではなく、国家と人民の利益を目的としたのだ」と表明しました。

解説

軍の支配継続への批判 背景に

 エジプト・モルシ大統領による突然の「憲法宣言」廃止と国防相らの解任劇――。昨年はじめの「革命」を主導した青年諸組織をはじめ多くの国民が軍のひきつづく政治支配を批判してきたことが、今回の事態を促す力となったことは疑いありません。

 同時に、大統領がわずか10日前、2日の新内閣発足の際にタンタウィ氏の国防相就任を承認しておきながら解任した直接の背景には、5日にエジプトのシナイ半島とイスラエル国境近くでエジプト兵16人が武装集団に襲撃され死亡した事件があります。軍最高評議会にこれを防げなかった責任を取らせたうえ、一気に権限も奪った格好となったのです。

 今後の政治の行方にとって焦点となるのは、今回の決定が大統領の一方的判断だったのか、それとも軍との間で合意があったのかどうかということです。モルシ大統領は12日、国防副大臣にアッサル司令官を充てる人事も行いましたが、同氏はロイター通信に対し、一連の決定は「タンタウィ議長や他の軍最高評議会メンバーとの相談にもとづいている」と証言しました。

 解任したタンタウィ、エナン両氏を大統領顧問につけたことに加え、国防相と参謀総長の後任に任命したアッシーシ、ソブヒ両氏とも軍最高評議会のメンバーであることからも、大統領決定が軍の影響力排除にただちにつながるかどうかは予断を許しません。

 一方、副大統領に任命されたメッキ氏はモルシ大統領の出身母体であるイスラム主義組織・ムスリム同胞団に非常に近い人物だと指摘されています。大統領が「憲法宣言」を突如として廃止した手法と合わせて、同胞団の強権支配にむすびつくことを懸念する声も上がっています。

 昨年初めの「革命」で主導的役割を果たした青年組織「4月6日運動」は今回の大統領決定について「国民のための国家の樹立に向けた第一歩」と評価しましたが、それが着実な歩みとなるかどうかは国民のたたかい次第だといえます。(カイロ=小泉大介)


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