「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年7月20日(金)

見逃されたいじめ

大津 中2自殺

因果関係否定していた市

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 いじめを受けていた大津市立中学2年(当時)の男子生徒が昨年10月に自殺した事件。なぜ学校現場でいじめを見抜けなかったのか、社会的な注目を集めています。訴状や記者会見などから明らかになった事実経過は…。

 自殺した男子生徒Aくんは、いじめていたとされる3人の同級生らと一緒にいるところを昨年7月ごろから見かけられるようになりました。

 9月ごろから、うつぶせになったAくんの上に乗る、死んだハチを無理に食べさせようとするなど、いじめがエスカレート。同月29日の体育祭では、Aくんの手足をハチマキで拘束し、口にガムテープを貼っていたことがほかの同級生や教諭らに目撃されました。

 こうしたいじめ行為を教諭らは直接目撃したり、生徒から報告されたりしていましたが、Aくんがいじめでないと説明したことなどから、いじめとは判断しませんでした。

 Aくんは合計40万円以上のお金を自分の通帳からおろし、親族宅から盗むなどしていました。父親はそのことを学校に相談していました。

 その後もいじめは続き、10月11日、Aくんは自宅マンション14階から飛び降り自殺しました。

調査打ち切り

 Aくんの父親は13日、「いじめがあったのではないか」と、学校と市教委に調査を要請しました。

 学校は17日、Aくんへのいじめについて1回目の全校生徒アンケートを実施。前述の行為のほか、「自殺の練習をさせられていた」「万引きしないと殴ると脅されていた」などの回答がありました。

 しかし、学校と市教委は、いじめはあったものの自殺との因果関係は判断できないとAくんの父親に報告。父親は再調査を要望しました。

 11月1日、学校は2回目のアンケートを実施。「いじめは本当にあった。自殺の練習と言って首をしめる。葬式ごっこ」などの回答がありました。

 しかし、学校は調査を打ち切り、市教委もこれ以上の調査は必要ないと判断しました。

 今年2月24日、Aくんの父親は、市、3人の同級生とその両親らを相手に約7700万円の損害賠償を求めて大津地裁に提訴。市側は当初、いじめと自殺との因果関係と、自殺を防げなかった過失を否定し、全面的に争う姿勢を示しました。

 しかし、今月に入り、「自殺の練習」などのアンケート回答の内容が報道され、学校と市教委の対応への批判が広がりました。

不十分と謝罪

 今月10日、沢村憲次教育長が「調査は不十分だった」と謝罪会見。その一方、「いじめと自殺との因果関係は判断できない」とのべ、自殺の要因については第三者委員会の調査で全容を明らかにしたいとの見解を示しています。

 学校長は14日の記者会見で、いじめを見逃したことについて「対応が不十分だったと認めざるをえない」と責任を認めました。

 17日には、裁判の第2回口頭弁論が開かれました。市側は「いじめと自殺の因果関係は今後認められる可能性が高い」とのべ、第三者委の調査を踏まえて和解協議をしたいとの意向を示しました。3人の同級生側はいじめを否定しました。


事実隠すと解決しない

 いじめ問題解決に取り組むNPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の大貫隆志さんの話 大津の事件は、私たちが見聞きする典型的ないじめ事件だと思います。いじめの事実の隠蔽(いんぺい)のしかた、学校・教育委員会の対応などは、全国どこでも判で押したようです。

 生徒の自殺後に学校がとったアンケートは、私たちが文部科学省に「生徒の自殺後3日以内に実施してほしい」と要望してきたものです。このアンケートが実施されたこと自体は前進だし、明らかになったことはいろいろあります。

 問題はアンケートの実施自体を学校が隠そうとしたことです。学校や市教委が事実を隠すことによって、遺族は非常に傷つけられます。これ以上、傷つけないでほしい。

 事実関係を明らかにしないと問題は解決しません。今もつらい思いをしているたくさんの子どもがいます。あたりまえのことが教育という場でなぜできないのかという思いを強くしています。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって