2012年6月26日(火)
エジプト大統領選 モルシ氏当選
“自由実現へ前進”
タハリール広場 数万人の歓声
【カイロ=小泉大介】エジプト大統領選挙でムスリム同胞団のモルシ候補が当選したことを受け、24日、「革命」の主要舞台となった首都カイロ中心部のタハリール(解放)広場には数万人が集まり夜遅くまで歓声を上げました。
男性公務員のモハメド・アリさん(33)は「私は非常に幸せだ。とうとう公平な選挙によって大統領が選ばれたからだ。これは革命の成功、民主主義、自由の実現にとって大きな前進だ」と力を込めました。
女性会社員のモナ・ラゲブさん(23)も「生まれてはじめて、自分の一票が政治を動かしたと実感した。革命の前途にはまだ障害があるが、国民みんなの力で乗り越えていきたい」と語りました。
解説
「革命」継続するには国民のたたかい必要
エジプトで昨年初めの「革命」まで30年続いたムバラク前政権時代には“セレモニー”と同義語だった大統領選挙。今回、「自由・公正」な選挙で「革命継続」を訴えた候補が新大統領に選ばれたことは、まぎれもない「革命」の成果といえます。
同時に、モルシ氏の勝利が「革命」の前進を必ずしも保証するものではなく、国民の引き続くたたかいこそが未来を決めるということも教えています。
前政権時代に弾圧されたムスリム同胞団は、昨年末の人民議会(下院)選挙で議席の半数近くを獲得して圧勝。その後、大統領選には候補者を出さないとの約束を反故(ほご)にしてモルシ氏を擁立しました。
大統領選第1回投票では同胞団の組織票を固めたモルシ氏も、決選投票では「革命」派や世俗派の支持がなければ勝利できず、にわかにアピールしたのが「全エジプト人による国づくり」と「革命の継続」。結果的には「革命」を主導した青年組織の一部からも支持を得ました。
第1回投票で「革命」派候補に投票し、今回、悩んだ末にモルシ氏を選んだ20歳の女性が「革命継続の約束にかけた。本当にすべてのエジプト人のために働くかどうか、厳しく監視しなければならない」と語ったように、公約実現には国民の不断の圧力が不可欠です。
エジプト国民の前には、実権を握る軍最高評議会も立ちはだかります。最高憲法裁判所の判決を受けた人民議会の解散後、評議会が17日に公布した新「憲法宣言」は、議会が再選出されるまで評議会が立法権や予算決定権を保持するなど、軍の権力を強化する内容です。
軍最高評議会が表明している今月末までの「民政移管」が実効性あるものになるのか。勝利したばかりのモルシ氏の政治姿勢、そして「革命」の前進を求める国民のエネルギーがさっそく試されます。(カイロ=小泉大介)