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2012年6月14日(木)

きょうの潮流

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 「故郷」と名づけた小説を書くとき、作家はどんな思いを込めて筆を握る、あるいはパソコンに向かうのでしょう。昨年来、故水上勉さんの1980年代の作品『故郷』が、あらためて読み手をふやしています▼アメリカで日本料理店を開いて成功した夫妻が、30年ぶりに帰国する。老後を故郷で暮らしたい。夫の故郷は、京都の丹後。村に帰った彼はいう。「不思議なことだが、…妙にここが中心に感じられて、京都もアメリカも遠い国になる」▼故郷の山河に抱かれた時、そこから巣立って生きてきた歳月の重さ長さが、こう語らせるのかもしれません。夫は続けます。「生まれ故郷というものの力があるのかなァ」。確かに、思い当たる感覚です▼妻の故郷は、福井県の若狭です。いまや“原発銀座”だと、アメリカにも伝わっています。夫妻の息子は、原発を「文明のお化け」とよび“脱原発”を唱えています▼妻が、夫とともに若狭に帰ってきました。原発銀座で近代化した村を、村人も「まばゆいような変わり方」といいます。一方、さびしがる人もいます。人のつきあいが薄くなった。カネに目の色が変わる生活…。若狭で暮らしたい妻ですが、夫は自然の美しさに魅せられながらも、現実を受け入れられません▼夫は語ります。原発事故がないとはいえない。核廃棄物の捨て場もない。「つとめを終えても、発電炉はぼくらが死んだあと…も燃え続けてゆく。燃える棺桶(かんおけ)だ」。水上さんの故郷は、今のおおい町、大飯原発のある町です。


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