2012年5月30日(水)
米大統領 イラク・アフガン戦没6400人
“戦争は終結”追悼
【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は、戦没者追悼記念日(メモリアルデー)の28日、戦没兵士が埋葬されているワシントン近郊のアーリントン国立墓地で演説し、「米兵がイラクでたたかわず、死んでもいないのは、9年ぶりのことだ。アフガニスタン戦争も終局に近づいている」と述べ、両戦争での米兵の戦死者6400人を追悼しました。
米国では、5月の最終月曜日はメモリアルデーとして公休日とされており、戦没者を追悼する行事が各地で開催されます。
ブッシュ前政権から引き継いだイラク戦争については昨年12月、終結宣言を行い、アフガン戦争は2014年に戦闘任務を終了させることを国際合意として確定させたオバマ氏にとって、今年は節目のメモリアルデーです。「10年にわたる戦争の暗雲が去った後、われわれは新しい時代の光をみることができる」と述べました。
しかし、10年間の長期戦争による兵士たちの傷痕は深いものがあります。
イラク、アフガン両戦争に従事した退役兵士の失業率(11年)は12・1%。退役軍人全体の8・3%を大きく上回ります。18歳から24歳までの若年男性退役兵士に限ると、失業率は29・1%。全米の同年代の失業率17・6%をはるかに上回ります。
背景には、身体的負傷に加え、精神面での負傷が社会復帰への障害となっていることが指摘されます。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や外傷性脳損傷(TBI)の増加はその典型例です。
睡眠薬などによる“薬漬け”の状況に置かれていて、適切な医療支援を受けられないケースも多く、自殺者、アルコール依存症患者も後を絶ちません。
厳しい財政事情から、軍事費の抑制策を模索する米政府ですが、その矛先は米兵士向け医療保険「トライケア」の費用抑制にも向けられています。
民間世論調査機関ギャラップ社が退役軍人を対象に行った調査では、オバマ氏の支持率が34%に対し、野党・共和党の大統領候補ロムニー前マサチューセッツ州知事の支持率は58%に上っています。