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2012年5月3日(木)

ドイツの原発廃止決断

“核技術もう使えない”

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 原発廃止に踏み出したドイツ政府の決定は、世界でも驚きを持って迎えられました。前年の10年9月に決定したばかりの原発稼働期間延長計画を撤回したものだったからです。

 ドイツでは、社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党の連立政権時の2000年に、政府と電力業界が21年をめどに原発を漸次廃止する合意文書に調印しました。しかし、この原発廃止の流れは、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)連立のメルケル政権によって中断されます。

 同政権は、21年廃止の期限を先延ばしし、原発の稼働期間を延長することにしたのです。この決定には環境保護団体から大きな反発が起きていました。

 しかし、この方針をメルケル首相は福島原発事故後、再び転換させました。

 メルケル首相は福島原発事故直後の昨年3月14日、「日本のような高い安全技術を持った国で、起こりえないことが起きた」と語り、操業延長計画を3カ月凍結し、原発を総点検する方針を発表、17基の原発のうち旧式原発7基の稼働が停止されました。同月下旬に同国南部の2州の州議会選挙で、原発早期廃止を求める緑の党が得票率、議席を躍進させました。2州のうち、州内発電量で原子力が52%を占め、CDUが単独で州政府を担当していたバーデン・ビュルテンベルクで初の緑の党の州首相が誕生したことも、この流れを加速させました。

 政府は6月、「倫理委員会」「原子力安全委員会」の答申を受け、国内原発17基の全廃を柱とする原子力法改正案を閣議決定しました。

 「倫理委員会」の最終報告は、福島第1原発事故を目の当たりにして「こうした事故はドイツでは起こりえないという確信は減少しつつある」「事故収束の見通しがたたず、損害の見積もりもできず、被害地域を空間的に限定することもできない」などの理由をあげ、「結論として、事故の可能性をなくすためには、核技術はもはや使うわけにはいかないということになる」と指摘していました。

 こうして提出された同法案は上下両院の可決を受け、7月8日に成立。福島原発事故以来稼働を停止していた原発7基に加え、故障多発で稼働停止中の1基の計8基は廃止、残り9基は22年までに閉鎖されます。

 原発廃止の決定が可能だった背景には、同国が以前から地球温暖化防止対策の一環としても再生可能エネルギー開発に取り組んできたことがあります。ドイツは、風力、太陽光・熱、バイオマス、水力などの再生可能エネルギーの発電に占める割合を10年までに12・5%にするという目標を07年に前倒し達成しており、さらに20年までに30%以上を達成する計画です。

 ドイツの最大手の電機会社シーメンスが昨年9月、原発事業からの完全撤退を表明したことも注目されます。レッシャー同社社長は週刊誌のインタビューに、「原子力は使わないというドイツ社会と政治の明確な見解に対する企業としての答えだ」と言明しています。 (夏目雅至)


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