2012年5月1日(火)
米強襲揚陸艦の出撃拠点
佐世保基地 戦場直結を実感
米海兵隊“殴り込み部隊”(海兵遠征隊)の上陸侵攻作戦などを支援する強襲揚陸艦ボノム・リシャールが新たに配備された米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)―。沖縄での第31海兵遠征隊創設に伴い、1992年に初めて強襲揚陸艦が配備されてから20年になります。沖縄の海兵隊と一体運用される強襲揚陸艦隊の出撃拠点として増強を続けています。(榎本好孝)
|
4月23日、それまで佐世保に配備されてきた強襲揚陸艦エセックスと、ボノム・リシャールとの艦交代式が行われました。
「ボノム・リシャールは(エセックスと違い)MV22オスプレイの搭載だけでなく、(実際の)作戦運用やメンテナンスが可能だ」―。ボノム・リシャール艦長だったリッチフィールド大佐(艦交代でエセックス艦長に)は式典後の記者会見で語りました。
佐世保配備に向け、ボノム・リシャールは1億4700万ドル(約120億円)を費やし指揮統制システムや飛行甲板などを最新化。垂直離着陸機オスプレイの運用を可能にするため、メンテナンス設備の更新、格納庫の拡張などを行いました。
“殴り込み”能力の強化とともに、早ければ7月にも米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)にオスプレイ部隊の配備を強行しようとしている計画に合わせた動きです。
|
ベッド600床
会見後には、報道陣に艦内の医療施設や飛行甲板を公開。担当者の説明などによると、医療施設には六つの手術室を含め600床のベッドがあり、X線検査室や血液保管室も備えています。航海時には、医師など医療関係者75人が乗艦。多数の死傷者の発生を想定しており、戦場に直結していることを強く感じさせました。
艦交代式があったのは、「ジュリエット・ベイスン」と呼ばれる係船池を埋め立てて造られた新岸壁でした。
佐世保重工業(SSK)と共同使用になっている別の係船池(立神港区)での岸壁競合を避けるためとして、約170億円の「思いやり予算」で2010年に完成。全長505メートル、面積5・7ヘクタールという広さです。式典時には、ボノム・リシャール(全長257メートル)と並んでドック型揚陸艦ジャーマンタウン(同186メートル)も停泊していました。
日米一体化
佐世保湾を囲む西海市の横瀬貯油所には3月末、エアクッション型上陸用舟艇(LCAC)の新基地も完成しました。「思いやり予算」約250億円が投じられ、12隻を収容可能。「ワールドクラスの素晴らしい施設だ」(佐世保基地司令官のロック大佐、長崎新聞2月20日付)と絶賛されています。
住宅地に近い前畑弾薬庫の「移転」として新しい弾薬庫建設の計画もあり、費用は1000億円とされます。
「佐世保は海上自衛隊との共同訓練、作戦行動にとって最適の場所だ」―。米太平洋艦隊水上艦部隊司令官のハント中将は23日の会見で語りました。
佐世保市の資料によると、海上自衛隊佐世保基地には護衛艦など25隻が配備されています。同市の陸上自衛隊相浦駐屯地には、南西諸島での島しょ部作戦が任務の西部方面普通科連隊が置かれ、米本土で米海兵隊と共同訓練を行ってきました。
在日米軍再編計画見直しの日米「共同発表」(4月27日)は、日本側も費用を負担し、テニアン島などでの訓練場建設を打ち出しました。西部方面普通科連隊と沖縄の海兵隊との共同訓練が視野にあります。
米海軍佐世保基地配備の艦船
◇強襲揚陸艦ボノム・リシャール
◇ドック型輸送揚陸艦デンバー
◇ドック型揚陸艦トーテュガ
◇ドック型揚陸艦ジャーマンタウン
◇掃海艦ガーディアン
◇掃海艦パトリオット
◇掃海艦アベンジャー
◇掃海艦ディフェンダー
|