2012年4月3日(火)
加速する民主化
ミャンマー補選 NLD圧勝
「軍の役割」 今後の焦点に
【プノンペン=面川誠】ミャンマーで1日投開票された補欠選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いるミャンマー最大の民主化勢力、国民民主連盟(NLD)が圧勝したことは、加速する民主化の勢いを示しました。スー・チー氏は軍の政治的役割を制度化した憲法の改定を主張。「軍の役割」を政治の焦点に据える姿勢を鮮明にしています。
スー・チー氏は選挙期間中のテレビ演説で、法の支配の確立、改革の基盤強化、少数民族との和解促進を国政の主要課題に挙げました。テイン・セイン大統領が行った議会演説と共通しています。
議席25%が軍に
政府とNLDは、ミャンマーが抱える課題についての認識を共有していますが、最大の対立点が国政での軍の役割です。
憲法は連邦議会の議席の25%を軍に割り当てているほか、非常事態には国軍最高司令官が「国家主権を継承し、行使する権限を有する」と明記しています。
スー・チー氏がテレビ演説で、軍の政治的役割をなくす憲法改定を主張したのに対して、ミン・アウン・フライン最高司令官は3月27日の国軍記念日演説で、軍の「政治における指導的役割」を強調。「憲法守護は軍の主要任務」だと言明しました。
スー・チー氏らNLDの当選者は、民主化促進を求める国民の期待を背負って議会に進出しますが、44議席はわずかな勢力です。
1988年の民主化デモを主導した元政治囚のコー・コー・ジー氏は、「期待しすぎてはいけない。彼女は魔術師ではない」と過剰な期待は禁物だと指摘。「われわれ『88年学生世代グループ』はNLDを支援するが、院内だけではなく院外でたたかう直接民主主義との連携が民主化前進に必要なことだ」と主張します。
制裁解除へ一歩
NLDの圧勝は、自由で公正な選挙を経済制裁解除の条件としてきた欧米諸国の動きに拍車を掛けそうです。
選挙監視のためミャンマー入りした欧州連合(EU)代表のワシレフスカ氏は、「われわれが目撃した不正常な行為は、悪意や意図によるものではなかった」と述べ、選挙がおおむね公正に行われたとの見方を示しました。
現在は世界最貧国のミャンマーですが、制裁解除と国際金融機関の支援が始まれば、豊かな天然資源と農業生産力を生かした経済成長が見込まれています。
ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は3〜4日にプノンペンで開く首脳会議で、経済制裁の解除を呼び掛ける予定。2015年に共同体創設を目指すASEANは、加盟国間の経済発展格差を縮めることを最優先課題にしています。
ミャンマーの民主化と経済発展は、ASEAN共同体の創設を通じた域内の協力促進と安定にも不可欠の要素になっています。