2012年3月9日(金)
シリア・ホムス 国連事務次長が視察
アラブ連盟特使も入国へ
【カイロ=小泉大介】国連のバレリー・エイモス人道問題担当事務次長は7日、軍による住民弾圧が続くシリアに入り、最も激しい攻撃が加えられている中西部ホムスを視察するとともに、同国のムアレム外相と会談しました。
外交努力は正念場
エイモス氏の今回のシリア訪問は、戦闘地域に対する人道支援物資の搬送を実施するための取り組みの一環です。
中東の衛星テレビ・アルジャジーラなどによると、同氏がシリア赤新月社とともに視察に入ったホムスのババアムル地区は完全に破壊されており、住民のほとんどはすでに避難していました。シリア側は事前にエイモス氏の自由な行動を許可するとしていましたが、立ち入りを禁止された地域もありました。視察中も銃撃の音が響いていたとされます。
エイモス氏はホムス視察に先立ち首都ダマスカスでムアレム外相と会談しました。国営シリア・アラブ通信(SANA)は同外相が「シリアの主権と独立を尊重するという枠組みのなかで、国連の活動に協力していくことを強調した」と伝えました。
7日にはシリアに派遣された中国特使、李華新・前駐シリア大使もムアレム外相と会談。SANAによると、ムアレム外相は、暴力の即時停止やアサド政権と反体制派との対話など中国側による提案に、「協力する用意がある」と述べました。中国の提案は、体制転換に向けた外部の介入を拒否することも盛り込まれているとされます。
シリアには、国連とアラブ連盟の合同特使に就任したアナン前国連事務総長も10日に入る予定で、事態打開に向けた外交努力は正念場を迎えることになります。
一方、ロンドンに拠点を置くシリアの人権団体「シリア人権監視団」は7日、アサド政権の反体制デモ弾圧の死者が約8500人に達したことを明らかにしました。また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などによると、隣接するトルコ、レバノン、ヨルダンに計数万の人々が避難しています。
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