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2012年3月3日(土)

主張

シリアの市民弾圧

アサド政権は暴力を停止せよ

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 中東シリアのアサド政権が、独裁に反対する市民に容赦ない弾圧を加え続けて、3月で1年になります。シリア西部のホムスやハマなど政権に反対する住民が多い都市を重火器で包囲、無差別に攻撃しています。死者は7500人を超え、多くが子どもや女性など非武装の住民です。戦闘が続くなか負傷者の救出さえ進まず、犠牲者の拡大が強く懸念されます。

 アサド政権は暴力をただちに停止し、住民への食料や医療などの人道支援を認めるべきです。国際社会は犠牲を抑えるために最大限の努力を払う必要があります。

政権の孤立鮮明

 シリア国民が民主的変革と人権尊重を求めるのは当然の権利です。残虐な弾圧下でも、独裁に反対し民主的変革を求める市民の運動は広がり、首都ダマスカス近郊でも衝突が伝えられます。

 中東各国で「アラブの春」と呼ばれる市民の民主化要求が高まるなか、チュニジアやエジプトでは直接には軍部の離反によって旧政権が崩壊しました。一方シリアでは、アサド政権が“指導党”とされるバース党と軍の強固な権力機構を握っています。シリアで国軍を離脱した兵士はごく一部で、政権を脅かすにはいたりません。

 国際的にはアサド政権の孤立ぶりは明らかです。国連総会は弾圧を強く非難し、あらゆる人権侵害をただちにやめるよう要求した決議を賛成137、反対12、棄権17の圧倒的多数で採択しました。

 しかし、それに先だって開かれた安保理事会では、同様の決議案にロシアと中国が拒否権を発動し、安保理は一致した対応がとれないでいます。意見の不一致には昨年起きたリビア問題の経緯が反映しています。

 昨年3月の安保理決議は、リビアで当時のカダフィ政権に攻撃される市民を「保護」するため、「あらゆる措置」をとることを認めました。欧米諸国は同決議に基づくとして、内戦状態のリビアに軍事介入し、同政権を倒しました。

 どんな政権であれ、他国が武力で打倒することは国連憲章に反します。しかも、シリアに軍事介入すれば、中東全域を不安定化しかねません。リビア問題の経緯はなお議論が熟していないものの、シリアに軍事介入すべきでなく、政治解決しかありえないことは国際的に明らかです。

 拒否権を発動したロシアと中国はとりわけシリアでの暴力停止に責任を負っています。両国はアサド政権に直接働きかけましたが、効果はみられません。一方、中東や欧米諸国、日本など約70カ国・機構が参加した「シリアの友人」会議は、シリアの反政府勢力と同国の民主化への支持を表明するとともに、経済制裁の強化などに合意し、実行に移しています。

急を要する人道支援

 アサド政権は、反政府側がボイコットするなかで「国民投票」を実施し、“複数政党制”に道を開く「新憲法」が承認されたと発表するなど、国際批判を前に支配の手直しもしています。シリア国民が自ら将来のあり方を方向付けるにはなお時間がかかりそうです。

 しかし、シリアでの暴力の停止と住民への人道支援は急を要します。国際社会は、軍事介入を厳しく戒めながら、人道支援を強める実効ある措置をとるとともに、政治解決への道を開くべきです。


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